あなたへ
あなた
コーヒー淹れたよ
いつも通り、淹れたてのコーヒーをお供えしながら、
あなたへ声を掛けた私の中へと、不意に聞こえて来たような気がしたのは、
うむ。ご苦労。なんて、こんな言葉でした。
胸の中へと届いたばかりの言葉を反芻すれば、
記憶の扉は一気に開いて、
これまで一度も思い出したことのなかったあなたの姿が、私の中へと蘇りました。
うむ。ご苦労。
思えば、あの頃のあなたは、時々ふざけて、
こんな殿様みたいな台詞と共に、
コーヒーを受け取りながら、笑っていましたっけ。
あぁ、そうだった。
これは、いつかのあなたの声だったのだと、
記憶の中にいるあなたと共に笑いながら、
またひとつ、大切な記憶を胸の中へと刻み直しました。
こうして蘇った記憶を集め直す度に、
私は、どれだけの記憶を、あの夏に置いて来てしまったのだろうかと考えますが、
それだけ、あなたと過ごした16年間の間には、
たくさんの大切な瞬間が、詰まり過ぎているのかも知れませんね。
時々、見せてくれたあなたの仕草や、
時々、聞こえていたあなたの言葉。
きっとまだまだ、
私の記憶の中に眠り続けたままになってしまっている一コマは、
たくさんあるのでしょう。
次はどんな記憶が蘇るのだろうかと、
まだ集めてはいない記憶に想いを馳せれば、
その時を迎えるのも、なんだか楽しみで。
こうして不意に記憶が蘇って、笑ってしまう瞬間もまた、
あの頃のあなたからの贈り物なのかも知れませんね。
1ページ目はこちらより↓↓