あなたへ
朝晩は、まだまだ寒さを感じるけれど、
日中の光は、日に日に暖かさを感じるようになって。
時折、強く吹く風には、まだ冷たさを感じながらも、
冬のそれよりも、随分と柔らかさを感じるようになった今日この頃、
私の中へと頻繁に蘇るのは、あの子と笑い合った小さな一コマです。
そう。あれは、あの子が研究生として歩み出した4年前の、
桜の花が少しずつ開き始めた頃のことでした。
日々、自宅でオンライン授業を受けながら、勉強へと向き合っていたあの頃。
仕事から帰った私を待っていてくれたのは、
いつでも分厚い参考書に向き合うあの子の姿でした。
早起きが出来た朝には、ランニングに出掛けていましたが、
朝から晩まで家の中で勉強に向き合っていたあの頃のあの子は、
日中の外の温度を知りませんでした。
昼間は暖かくなったの?
そうだね
昼間はね、随分と暖かくなったよ
桜がね、ひとつふたつくらい咲き始めたんだよ
これは、そんなある日のあの子との会話でした。
冬から春へと移り変わるこの時期の日中は、
家の中では、肌寒さを感じていても、外へ出れば、とても暖かであったりして。
あの頃のあの子は、勉強へと向き合いながらも、
外へ出なければ感じられない季節の移り変わりが、気になっていたようでした。
丁度、桜の花が開き始めたところであると、
こんな話をした私の声に頷いたあの日のあの子は、
突然に笑い出して言いました。
なんかさ、今の会話って、おじいさんとおばあさんの会話だよねって。
体調が優れず外に出られないおじいさんと、
そんなおじいさんの身の回りのお世話をするおばあさん。
時代劇なんかでありそうなシーンの会話であるようにも思えて来て、
あの日の私たちは、2人で笑ったのでした。
4年前、此処で一緒に笑っていたあの子は、
間も無く社会人4年目を迎えるのだと、記憶が蘇る度に、
私は感慨深く、あの頃を何度も反芻してしまうのです。
あの頃のあの子が、
毎日、毎日、懸命に勉強へと向き合っていたのは、
思い描いた未来を歩むためでした。
今頃のあの子は、季節の移り変わりを、その肌で、しっかりと感じながら、
あの頃のあの子が思い描いた未来をしっかりと歩んでいるのでしょう。
今日は、私の胸の奥へと仕舞われていた、
あの子との大切な一コマを、あなたにもお届けしておきます。
こちらでは、今年も間も無く桜の時期がやって来ます。
今年は幾つくらい、私の中へとピンク色の景色を集めることが出来るだろうかと、
今から、とても楽しみにしています。
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