拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

足が30センチくらいに伸びた気分

あなたへ

 

あぁ・・・

足が30センチくらいに伸びた気分

この気持ち、分かる?

 

靴を脱いだ瞬間に、私の中へと不意に蘇ったのは、

いつかのこんなあなたの声でした。

 

蘇った声に、思わず笑いながら記憶を辿れば、

靴を脱いだあなたの姿がそこにありました。

 

あれは、そう。

私たちが出会ってから、初めて遠出をした日のことでした。

 

初めて見る景色の中を、たくさん歩いた帰り道。

車を停められそうな広場を見つけたあなたは、

ちょっとひと休み、なんて言いながら、そこへ車を停めて。

靴を脱ぐと、言ったのでした。

 

あぁ・・・

足が30センチくらいに伸びた気分

この気持ち、分かる?って。

 

全くその気持ちが分からないままに、あなたの言葉に笑っていたあの日の私が、

いつかは私にも、あなたのこの言葉の意味が、理解出来る日が来るかしらと、

密かにこんなことを考えていたのは、

私よりも4つ年上のあなたは、

私より、ずっと多くのことを知っている大人だと感じていたからなのかもしれません。

 

次の夏がやって来たのなら、

私たちが出会ってから、28年を迎えます。

 

思えばあの頃の私は、様々な経験を通して、

様々なことを知ることが出来た私へと成長することが出来ましたが、

こうして改めて考えてみても、

あの日のあなたの気持ちは、ちょっと理解することが出来ませんでした。

 

ねぇ、あなた

足が30センチくらいに伸びた気分って、どんな気分ですか

 

笑みを浮かべながら、思わず呟いた私の声は、静寂の中へと溶けて行き、

僅かに期待したものは、何も聞こえなかったけれど、

あの日にいたあなたは、あの日の私のことだけではなくて、

あれからずっとずっと先の未来にいる私のことも、

こうして笑顔にしてくれました。

 

それまで、一度も思い出すことのなかった筈のあなたとの一コマが、

突然に記憶の奥から飛び出して来て、思わず笑顔になってしまう。

 

あの頃にいたあなたに、私は何度こうして、笑わされて来ただろう。

 

あの頃の私が、いつかは、と考えていたあの頃のあなたの気持ちは、

結局、分からないままだったけれど、

今日の私は、あの頃の私が、

あなたの隣で密かに考えていたことへの結論を紐付けた新たな形で、

大切な一コマを、もう一度、

この胸の中へと刻み直すことが出来ましたよ。

 

 

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