拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの日にいたあなたからの贈り物

あなたへ

 

ねぇ、あなたは、あの日の空の色を覚えていますか。

 

あの日は、厚い雲に覆われた1日だったけれど、でも、雨は降らなくてさ。

私たちは、灰色の空の下を、手を繋いで歩いたのよ。

 

写真を撮られるのは好きじゃない。でも、撮るのは好き。

こんなあなたは、私の写真ばかりを撮って。

 

そこに立ってみて

あの場所から写真を撮ってあげるって、

あなたは私にカメラを向けるばかりで、

あなたの写真は、1枚も撮らせてはくれませんでしたね。

 

そうそう。あの頃のカメラと言えば、使い捨てカメラが主流で。

コンビニエンスストアでも、スーパーマーケットでも、

どこでも、使い捨てカメラがたくさん並んでいる時代でした。

 

あの日の私たちは、途中で立ち寄ったコンビニエンスストアで、

使い捨てカメラを購入したのよね。

 

昨夜の私が、詳細の記憶を辿っていたのは、あの日のことでした。

 

そう。これは、あの、足が30センチくらいに伸びた気分だと、

こんなあなたの声が聞こえるまでに、私が見た景色です。

 

あなたは、あの日のことを覚えていますか。

 

あの日の私たちは、曇り空の下をたくさん歩いた後で、

最後に、色違いのブレスレットを買いましたね。

 

あなたはブラック。私はピンク。

 

あれからの私たちの手首には、

いつでも、あの日買ったブレスレットがついていてさ。

 

あなたは、そういうのには興味がない人だと思っていたから、

色違いで、ブレスレットを買おうと言ってくれたことも、

その後、いつも互いの手首に、あの日買ったブレスレットがついていたことも、

なんだかとても、嬉しかったんだ。

 

あれからずっと、私の左手首が、あのブレスレットの居場所であった筈なのに、

私はいつから、あのブレスレットをしなくなってしまったのだろうかと記憶を辿れば、

小さなあの子の姿が見つかりました。

 

そう。私は、あの子が生まれて来てくれたことをきっかけに、

このブレスレットは、暫くの間、封印しようと考えて、

大切に仕舞ったまま、此処までを歩み続けて来たのでした。

 

あの日のことを鮮明に思い返していた昨夜の私は、

新しい朝を迎えると、

長い間、仕舞ったままであったあのブレスレットを取り出して、

まずは手入れをし、あの頃と同じように、左手首へとつけてみました。

 

特有の重み。存在感。

全てがあの頃のままであるこのブレスレットを眺めれば、

あの頃の私もまた、こんなふうに、

何度でも、ブレスレットを眺めていたことを思い出して。

 

左手首に、あの頃を置いて過ごした今日の私は、

やはり何度でも、このブレスレットを眺めながら、

とても幸せな気持ちのままで、1日を過ごすことが出来ました。

 

いつの間にか、つけることのなくなってしまったもの。

 

私の中でのこのブレスレットは、長い間、こんな位置付けのまま、

時々、ジュエリーケースを開いては、大切に眺めるものへと変わっていました。

 

まさか、またこんなふうに、

このブレスレットをつける日がやって来るだなんて、思ってもみなかったけれど、

こうして、改めて、昨夜からの流れを振り返ってみれば、

幸せな気持ちで過ごすことが出来た今日は、

あの日にいたあなたからの贈り物であるようにも感じました。

 

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