あなたへ
それでさ、あの時計の説明書、あなたは知らないよね?
これは、昨夜の私から、あなたへの声。
寝る前の頃になると、あなたの前に座るのが、
いつ頃からかの私の習慣となりましたが、
昨夜の私は、あの時計の説明書についてを話し掛けてみたのでした。
いつも通り、穏やかな顔を向けてくれるあなたの顔を確認したところで、
何故、昨夜の私は、クルッと向きを変えて、
あなたに背を向けるような形で座り直したのだろう。
こうして思い返してみても、昨夜の私が取ったあの無意識な行動の理由は、
よく分かりませんが、
何故だか、あなたに背向けた形で座り直した後で、
何を考えるでもなく、ボーッとした私が不意に感じたのは、背中の温かさでした。
はっきりと感じたその温かさは、とても心地が良くて、なんだか、ホッと出来て。
私は、暫し、背中に感じる温かさに身を委ねながら、
ただ、心地良さを感じ続けたのでした。
こうして不意に背中への温かさを感じるようになったのは、
思えば、あなたを見送ってからのことでしたが、
改めて、昨夜の不思議な流れを思い返せば、
昨夜のあなたは、その不思議な力を使って、
私に、座る向きを変えさせたのではないかと、そんな気もしてしまいます。
だって、これまでの私は、一度も、
あんなふうに、あなたに背を向けて座ったことなどなかったもの。
昨夜のあなたは、
私に何かを伝えようとしてくれていたのでしょうか。
こうして、昨夜の出来事を改めて振り返ってみたけれど、
そこにどんな意味があったのかは、分からないままだったけれど、
昨夜のあなたは、あなたが持つその不思議な力を使って、
時計の時刻を直してはくれなかった代わりに、
不思議なものを見つけさせてくれたのかも知れませんね。
これまでの私が見つけたどの温かさよりも、
しっかり、はっきりと感じることがあれは、なんだか、
ちゃんと形取られたあなたが、
ピタリと背中に寄り添ってくれていたようにも感じていました。
身体が直ぐに冷えてしまう私にとってのあなたって、
いつでもあんなふうに、とても温かで。
昨夜の温かさを感じていたあの時間の私は、
そんなあなたのことを思い出していたよ。
結局、あなたの目覚まし時計は、時刻が進んだまま、
何も変わらなかったけれど、
私は、それよりも素敵なものを見つけることが出来たのだと思います。
あの時間のあなたは、きっと直ぐ側に寄り添ってくれていたんだね。
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