あなたへ
それは、先日のことでした。
朝起きて、窓から空を見上げながら天気を確認して、
出掛ける準備を始めたところで、不意に蘇ったのは、あの夏の記憶でした。
目の前で、突然にあなたの心臓が止まりかけ、
必死にあなたの名前を叫ふ私は、部屋の外へと連れて行かれて。
リアルに蘇った記憶の中で、私は朝から、あの日をやり直したのです。
ほら、やっぱり。
やっぱり私たちが側にいたら、あなたの心臓は止まってしまうのだ。
あまりにもリアルな記憶の中で、あの日をやり直すことになった私は、
自分が今、呼吸をしているのか、いないのかさえ分からなくなって。
泣きながら握り締めた手の痛み。
泣きながら聞いた音。
全てがリアル過ぎる記憶の中で、
耐え難い苦しみをほんの少しだけ逃すかのように、大きく深呼吸をして。
何故、朝から記憶が蘇ったのだろうかと考えてみても、
何も分からないままだったから、
今日が朝から雨だからであると、こんな理由をつけて、
もう一度、大きく深呼吸をすると、やるべきことへと向き合ったのでした。
雨の日というのは、
時に便利に利用出来る天気でもあるのかも知れません。
大切な人と死別するということは、
こうして記憶の中で何度でも、辛かった時間を体験することであり、
知ってしまった痛みは、決して癒えることはないけれど、
何度も体験しなければならなくなった記憶というのは、時に、
新たな視点を見つけさせてくれるものでもあるのだと思います。
先日の私は、記憶の中で、あの日を体験する以外に、
別の何かを見つけることは出来なかったけれど、
今の私には、あの夏にいた私には見つけることの出来なかった、
新たな何かを見つける時が来ているのかも知れないとも感じています。
またあんなふうに、不意に記憶が蘇ったのなら、何度でもあの日をやり直しながら、
そこに隠されたままになっているのであろう何かを、
ちゃんと見つけて行きたいなと、
今日の私は、改めて、先日の雨の日を振り返りながら、こんなことを考えていました。
痛みの先にある大切なものは、
痛みの先でなければ、見つけることの出来ない大切なものでもあるのかも知れません。
今の私にだから、
漸く見つけることの出来る何かを見つけることが出来たのなら、
私は、どんな気持ちでそれを見つめるのだろう。
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