あなたへ
その夜は、突然に訪れました。
私は幼い頃からそれまでずっと、夜、眠る時には常夜灯がついていなければ、
安心して眠ることが出来なかった筈なのに、
ある夜、目を閉じると、常夜灯の光が何故だか異様に眩しく感じたのです。
眠いのに、眩しくて眠れない。
この人生の中で初めて、こう感じた私は、
この人生の中で初めて、常夜灯を消し、部屋を真っ暗にして、眠りに就いたのでした。
こうして部屋を真っ暗にして眠るようになったあれから、数日が経ちますが、
この人生の中での初めての経験の中で私が知ったのは、
部屋を真っ暗にした方が、
眠りへの入り口がとても近いことと、眠りの質が良くなったこと。
そして、窓から僅かに届く朝の光で、部屋が明るくなる頃になると、
自然と目が覚めるのだということでした。
人工的な光のない場所で眠ることは、人間の身体が持つ本能的な部分が、
目覚めることでもあるのかも知れません。
部屋の中へと僅かに届き始めた朝の光で目を覚ますということが、
どれだけ心地の良いものであるのかを、私は初めて知りました。
とは言え、この時期の日の入りは、とても早いです。
僅かに明るくなり始めた部屋の中で、自然と目が覚めるものの、
目覚まし時計の音が鳴るまではと、私はもう一度、目を閉じてしまうのですが。
目覚まし時計の音に叩き起こされるまで、起きられない。
そして時々、目覚まし時計の音が聞こえない。
朝が弱い私は、そんな朝ばかりを迎えながら、時には、
目覚まし時計がなかった時代の人たちは、
どのように起きていたのだろうかと、こんなことを考えてもいましたが、
ずっとずっと昔、人工的な光が存在しなかった時代の人たちというのは、
真っ暗な部屋の中で眠ることがきっと当たり前であり、こうして、
身体で朝を感じて、自然に目を覚ましていたのかも知れませんね。
人の身体というのは、本当にとても良く出来ているものだなと、
最近の私は、これまでの私が知らなかった目覚めを体験しながら、
こんなことを考えています。
あなたよりも8つ年上になり、私は初めて、
暗闇の中で、眠ることが出来るようになったのだと、
こんなふうに考えてみれば、なんだか笑ってしまいますが、
人というのは、様々な経験を経て、
やがて本来の人間の身体に合った生き方を好むようになるのかも知れませんね。
ある夜、突然に、常夜灯の光が眩しく感じるだなんて、
こうして振り返ってみても、なんだかとても不思議な始まりでしたが、
最近の私は、目覚まし時計が鳴るよりも先に、
この世界にやって来た朝に心地良く起こされるという、
これまでの私が知らなかった朝の訪れを楽しんでいます。
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