拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

令和最初の日の出来事

あなたへ

 

丁度、5年前。

家族3人で、

最後に過ごしたゴールデンウイークを、覚えていますか。

 

海に行きたい

そんな私のリクエストに応えてくれたあなた。

 

岩場で、イソギンチャクや小魚を観察しながら、

初めて海にいるヒトデを見つけた私たちは、大興奮でしたね。

水族館でしか見たことなかったよ って。

 

この時期にしては、肌寒かったあの日は、曇り空。

 

寒くて頭が痛くなった

もうすぐ雨が降ってくるから、早めに車に戻っておいでね

 

そう言い残して、あなたは先に車へと戻って行きましたね。

 

寒いよりも、楽しい方が大きかったあの子と私は、

それから暫くの間、海を楽しんでから、車内へと戻ると、

間もなくに、大粒の雨が降ってきたんでした。

 

先日、令和最初の日は、

あの子と一緒に、色々なところへ遊びに出掛けました。

 

遅めに取った昼食の後で、

あの子の提案から、海へ出掛けることになりました。

 

私にとっては、5年前、3人で行った以来の海でした。

 

あの日の天気は、朝から曇り空。

日中は、気温が高かったものの、夕方には肌寒い気温に。

 

渋滞に巻き込まれながら、

漸く、海へ到着すると、途端にパラパラと雨が降り出しました。

 

それでも、せっかくだからと、車を降りると、

雨に当たりながら、短い散歩を楽しみました。

 

寒すぎる!

そう言いながら、あの子と2人で、車内へ戻り、

フロントガラスに当たる雨を眺めながら、

5年前、家族3人で海へ出掛けた日の話をしました。

 

覚えてるよ

お父さんが、寒くて頭が痛くなって、先に車に戻ったよね

あの後、近くのショッピングモールへ着いたら、

急に強い雨に変わってさ

 

海へ行きたい

あなたを見送り、暫くが経った頃から、

そんなふうに思いながら、なかなか機会がなかった私が、

5年振りに海に行くことが出来た日は、

最後に海へ行った日と、よく似た天気の日でした。

 

あの頃と違うのは、

私よりも背が高くなったあの子と、

此処にいないあなた。

 

そんなふうに考えていましたが、

本当は、そうではなかったのかも知れません。

 

それは、あの日の食事前の車内での出来事。

 

眠くなったと20分だけ仮眠を取ったあの子は、

今、お父さんの夢を見たよと言いながら、起き出しました。

 

このイビキは誰だ?

そう言って楽しそうに笑うあなたの声と、

この子のイビキよ

と私の声が聞こえて、目が覚めたと話してくれました。

 

あの時は、

笑ってあの子の話に耳を傾けていましたが、

今、思い返してみれば、

あなたは、あの日、すぐ側にいてくれたように思います。

 

小さな寝息を立てるあの子に、

誰だ?なんて、あなたらしい言葉と、

最後に3人で海へ行った日と、よく似た天気。

 

私たちはあの日、

あなたのことを想いながら、1日を過ごしていました。

 

あなたは、そうと気付かれないように、

細心の注意を払いながら、

こっそりと、

私たちと一緒に、

新しい時代の始まりを見ていたのでしょうか。

 

思い返せば、

不思議なことが重なった、令和最初の日の出来事。

 

きっと、側にいてくれたあなたのお陰で、

忘れられない素敵な1日になりました。

 

 

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令和元年

あなたへ

 

新しい時代が始まりました。

令和元年です。

 

昭和、平成、令和と指折り数え出したあの子は、

 

お母さん、婆ちゃんじゃん

 

なんて、言い出しました。

おばちゃん等ではなく、婆ちゃんです。

 

あの子と一緒に笑いながら、

昭和から、平成に変わった頃のことを思い出していました。

 

明治、大正、昭和、平成の時代を生きた私のお婆ちゃん。

幼心にも、お婆ちゃんは凄いなと思っていましたが、

私も、昭和、平成、令和と時代を生きることになりました。

 

あの子は、時々、

私の古い発想に、

 

これだから、昭和生まれは

 

なんて、笑いますが、

いつかあの子も、

 

これだから、平成生まれは

 

なんて言われる日が来るのかも知れませんね。

 

お母さん、婆ちゃんじゃん

 

そんな言葉に、ふたりで、ひとしきり笑いながら、

でも、新しい時代を迎えることが出来て、嬉しいでしょ?

そう呟いたあの子。

 

一瞬、ふたりで黙り込んだあの時、

あの子も私も、

きっと、同じことを考えていたのだと思います。

 

決して口には出さないまま、

ただ、静かに想ったあなたのこと。

 

きっと、あの子の中に浮かんだのも、

あなたの笑顔であったのだと思います。

 

あなただけ、迎えることが出来なかった新しい時代。

 

この令和という時代に、

あなたのその笑顔も、大きな手も、温もりもないけれど、

それでも、前へ進んでみたいと思ってしまうのは、

あの頃のあなたが、

私の背中を押し続けてくれているからなのでしょう。

 

新しい時代へ一歩、踏み出した私は、

どんな素敵なものを、見つけることが出来るでしょうか。

 

きっと、この令和という時代でしか見つけることが出来ない、素敵な何かが、

あるような気がします。

 

生きている

ではなく

生かされている

 

これは、いつかのあなたの言葉。

 

きっと私は、この新しい時代から、

多くのことを学ぶのでしょう。

 

 

 

平成最後の日

あなたへ

 

間も無く、平成が終わります。

 

平成31年。

この半分と少しを、あなたと共に過ごしてきましたね。

 

時代の流れと共に、その頃の流行りだったものを楽しんだり、

ニュースを観ては、一緒に胸を痛めたり、

それについて話し合ったり、

あなたと一緒に、色々なものを見てきました。

 

世の中では、良いことも、悪いことも、

キリがない程に、たくさんの出来事がありましたが、

私にとって、この平成という時代は、

たくさんの愛に溢れた時代でした。

 

あなたと出逢い、あなたに恋をして、

掛け替えのない、小さな命が生まれて来てくれたのも、

あなたのその温かな手を、最後に握ったのも、

この平成での出来事。

 

平成最後の日。

 

降り続く雨を窓から眺めながら、

あなたと出会った頃からのことを思い出していました。

 

あなたと出会った日

初めて手を繋いだ日

初めて喧嘩をした日

プロポーズをしてくれた日

 

夫婦になった日

お父さんとお母さんになった日

 

ふたりで見守ったあの子の成長

幼稚園

小学校

中学校

 

最後にあなたの手を握った日

 

あなたは、もうここにいないけれど、

私が成長し続けることが出来るのは、

あなたがずっと、側にいてくれたから。

 

当たり前に過ごしてきた日々の中、

あなたは、私にたくさんのものを遺してくれました。

 

振り返ってみれば、たくさんの笑顔が溢れたこの時代は、

あなたのお陰で、

たくさんの愛を学ぶことが出来たのだと思います。

 

明日から迎える新しい時代に、

どんな素敵なものを見ることが出来るだろうかと、

胸をときめかせながら、

私は、これから先も、前へと歩んで行きますが、

私がふと、思い出すのは、

あなたのたくさんの温もりが残る、

この平成という時代なのでしょう。