拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

おばあちゃん、ではなく、おじいちゃん

あなたへ

 

もう!また食べちゃった!食べちゃったじゃないのよ!と、

自己嫌悪に陥ってしまったのは、昨夜の私です。

 

あなたの場所にお供えしてあるお菓子は、

特別に美味しそうに見えてしまうのだと、こんな手紙を書いた日がありましたが、

あれからも相変わらずに、あなたの場所にお供えしてあるお菓子は、

とても美味しそうに見えてしまいます。

 

それ故に、相変わらずに私は、つい、

あなたの場所へとお供えしてあるお菓子にばかり、手を伸ばしてしまうのですが、

それにしてもここ最近の私は、お菓子を食べる率が、

格段に上がっているような気がするのです。

 

先日の私は、すっかりとお菓子を食べ終えた後で、

今後は、少しお菓子を控えようと、心に誓った筈なのに、

昨夜もまた気が付けば、あなたへ、いただきますと手を合わせて挨拶をし、

なんの躊躇もないままに、お菓子を食べてしまっていたのです。

 

これはやはり、どう考えても、

あなたからお菓子を勧められているのではないかと、そんな気がしてなりません。

 

もう。あなたったら、なんだかおばあちゃんみたい。

 

思わずこう呟いて、なんだか笑ってしまったのは、

幼かった頃の断片的な記憶と、私があなたに手を合わせた時と、

実は全く同じことが起こっているのではないかと、

そんな気がしてしまったからでした。

 

思えば、幼い頃は、おばあちゃんの家へと遊びに行けば、

これ食べたら?あれ食べたら?と、

いつも、たくさんのお菓子や食事でもてなして貰っていました。

 

あなたのその声は、もう、私の耳には届かないけれど、

あなたへ手を合わせる度に、あのような展開が、

実は繰り広げられているのではないかと、私の中で、不意に重なってしまったのです。

 

大人になった私はもう、

そのような気遣いをされる側ではなくなってしまったけれど、

こうして考えてみれば、今のあなたにとっての私というのは、

あのような存在でもあるということなのでしょうか。

 

気が付けば、あなたへの、いただきますの挨拶をする頻度が高まり過ぎて、

なんだか困っている私ではありますが、

もしもそうであるとするのなら、

私はこれからも、遠慮なく、お菓子に手を伸ばしても良いのかしらね。

 

そこに、あなたの想いがあるのだとするのなら。

 

昨夜の私は、ここ最近の私のお菓子事情についてを、

こんなふうに纏めてみたわけですが、

ところで、せめてそこは、おじいちゃんだよね?なんて、

こんなあなたの声が聞こえて来たような気もして、

最後に、おばあちゃん、ではなく、おじいちゃんへと訂正することにしました。

 

まさか、私よりも年下となってしまったあなたを、

おじいちゃん扱いする日が来るだなんてねと、やはりなんだか笑ってしまいましたが、

そんなふうに過ごした昨夜は、

なんだかいつもよりも穏やかな夜であったような気がしています。

 

 

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頭がクラクラする本

あなたへ

 

何度でも読み返したい本との出会いが訪れたのは、

あの、早い流れの中を歩んでいる頃のことでした。

 

ゆっくりと読書をする時間を取ることが出来なかったあの頃の私は、

時間を掛けて、少しずつ、この本を読み終えることが出来ました。

 

漸く最後のページへと栞を挟むことが出来た私が、

改めて、この本を開いたのは、いつの頃のことだったでしょうか。

 

もう一度、この本を読んでみるつもりだったのに、

数十ページ程の文字を巡ったところで手を止めて、

やがて別な本ばかりへと手を伸ばすようになっていたのは、

掬い上げることが出来そうな気もするのに、

なかなかその全てを掬い上げることの出来ない。

そんなもどかしさのようなものを感じていたからなのかも知れません。

 

一度、読んだだけでは、その全てを理解することが出来ないからこそ、

そこに大きな価値を見出していた筈だったのに、

そこから逃げるようなことをしてしまっていたのは、

そのような本と向き合うことというのは、

勉強とよく似た側面を持ち合わせているからなのでしょうか。

 

理解が出来なくても良いから、読み進めてみる。

 

ある種の決意を固めて、数十ページ目で栞が止まってしまったあの本を、

再び開いてみたのは、昨夜のことでした。

 

途中からのページを辿るには、あまりにも時間が経ち過ぎているようにも感じて、

もう一度、初めから、読んでみることにしましたが、

何故なのでしょうか。

 

文字を読み進めてみればみるほどに、

何故だか頭がクラクラとして来たのです。

 

それでも文字が読めないわけではありませんし、

出来る限り、ページを巡ることにしましたが、

今回の私は無意識にも、以前にこの本を読んだ時よりも、

ゆっくり、ゆっくりと文字を辿っていました。

 

相変わらずに、内容はとても難しいものではありましたが、

初めてこの本を読んだあの頃よりも、

ほんの少しだけ、そこに書かれた内容を理解出来ているようにも感じました。

 

これまでの私は、様々な本を読んで来ましたが、

頭がクラクラとする本との出会いは、これが初めてのことです。

 

こうして昨夜の出来事を思い返してみても、

なんだかとても不思議な気持ちがしますが、

もしかしたら私は、初めてこの本を手にした時の私よりも成長し、

この本の世界へと、ほんの少しだけ近付くことが出来ているからこそ、

あのような現象が起こったのかも知れないと、

今日の私は、こんなふうに考えてみました。

 

さて。今回の私は、

この本を最後まで読み終えることが出来るのでしょうか。

 

それともまた、ついつい普通に読むことが出来る別な本へと、

手を伸ばしてしまうのかしらね。

 

もしも、私がこの本を最後まで読み切ることが出来たのだとするのなら、

私は、過去の私から、

何が変わったのかを見つけることが出来るのかも知れませんね。

 

 

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今朝の私が探したあなたの声

あなたへ

 

あなた、行ってきます

 

いつも通り、あなたへの行ってきますの挨拶をしただけなのに、

不意に、行ってらっしゃいのあなたの声が、

どうしても聞きたくなってしまったのは、今朝のことでした。

 

そっか。私はもう、二度と、

あなたの声を聞くことが出来ないんだね。

 

あの夏からの私は、何度、こんな気持ちを感じて来ただろう。

 

この人生を生きる限り、私はもう二度と、

あなたのその声を聞くことが出来ないことなど、分かり切っている筈なのに、

今朝の私は、行ってきますの挨拶の後で、

少しだけ、あなたの声を待ってしまいました。

 

あなたのその穏やかな顔を見つめてみても、

部屋中を見回してみても、静寂なままで。

 

どこにもあなたの声を見つけることが出来ないままに、

仕方なく、私はもう一度、行ってきますと小さく呟いて、玄関へと向かったのでした。

 

今朝は、こんないつも通りではない出発の仕方をしたからだったのでしょうか。

 

その後の私はいつも通りの顔をして、車のエンジンを掛けて、

目的地へと向けて車を走らせた筈だったのに、

不意に私の中へと見つけてしまったのは、

これまでには考えたこともなかった視点からのあなたの声についてでした。

 

私は、あなたから、行ってらっしゃいと言葉を掛けてもらったことは、

殆ど、なかったかも知れないなって。

 

あの子が幼かった頃の私は、小さなあの子を抱いて、

あなたへ行ってらっしゃいと、声を掛けていたし、

やがて私も仕事へと出掛けるようになっても、あなたの方が出発が早かったもの。

 

こうして考えてみると、私は、何度くらい、

あなたからの行ってらっしゃいを聞いたことがあっただろう。

 

こんなことに気付いてしまったって、

どうにもならないことなど、分かっている筈なのにさ。

 

新たに見つけてしまった視点は、私の心を僅かに俯かせたけれど、

でも、私はあなたに、

たくさんの行ってらっしゃいを言うことが出来ました。

そしてその数だけ、私は、あなたからの行ってきますを受け取りました。

 

ねぇ、あなたは、知っていましたか。

 

行ってらっしゃいってね、

行って帰っていらっしゃい、という意味の省略形の言葉であり、そして、

行ってきます、は、行って帰って来ます、から進化した言葉なのよ。

 

そう。だからこそあの頃のあなたは、行ってきます、の言葉の通り、

事故に遭ってしまっても、仕事で大怪我をしても、

必ず、帰って来てくれていたのかも知れませんね。

 

いつかの私は、

今、此処にある日常に溶け込んだいつもの挨拶が、

そちら側とこちら側を繋ぐものであったら良いと、こんなふうに考えて、

あなたへの挨拶を、より大切なものへと変えることが出来た筈だったのに、

不意に見つけてしまった視点は、今日の私を立ち止まらせました。

 

でも、こうして改めて考えてみれば、

私が毎日、当たり前かのように元気に、

家へと帰って来ることが出来ているのもまた、

あなたの場所がある此処に帰って来ると、

毎朝、約束をしているからなのかも知れないな、と考えてみることも出来ました。

 

どんなに探しても、もう此処に、あなたの声は聞こえないけれど、

あなたへのいつもの挨拶を、これからも大切にして行きたいなと思いました。

 

 

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