emi’s fantasy 3月32日
www.emiblog8.com あなたへ ねぇ、あなた。 もしも1日だけ、奇跡を起こせるとしたら、 私たちは、どんな時間を過ごすのだろう。 あなたは、 どんな1日を過ごしたい? 目を閉じて、想像してみて。 今、あなたの目の前に、何が見えますか。 //
目覚ましの音で目が覚めた。 ここは、2年2ヶ月前に、引っ越してきたアパートの私の部屋だ。 いつも通り、無意識に窓に目をやり、まだ光が差す前であることを確認して、体を起こす。 思えば、随分、暖かくなり、布団から出るのがスムーズになった。 携帯電話…
彼に促されながら、それぞれに寝る支度を整えた。 「今日は、3人で寝ようか。」 彼からの提案に、3人揃って寝室へ移動し、あの子と私は、早々に布団に入った。 3組が並んだ布団は、 あの子と私が、寝支度を整えている間に、彼が敷いてくれた。 彼の布団を真…
食事を終えると、彼は、今日買ってきたプランターをテーブルの上に置いた。 3人で、種を植えようと言う。 彼がポケットから取り出した種は、見たこともない不思議な種だった。 大きさは、Lサイズのたまごより、ひと回りかふた回り大きく、雫型をしている。 …
いつものスーパー。 棚の陰から、彼とあの子が、私の様子を伺っている視線を感じる。 これは、彼らの『お菓子買って作戦』だ。 素知らぬ顔で買い物を続けていると、ササッと2人が近づいて来て、カゴにそれぞれのお菓子を入れた。 「これもお願いしまーす。」…
ここへ3人で来るのは、何年振りだろうか。 いつか、彼とあの子が転がって遊んだ芝の坂の上に3人並んで座ると、ジュースを飲みながら、少し、休憩することにした。 最後に3人でここへ来た時、彼もあの子も芝だらけになりながら、この坂を転がっては、笑ってい…
ここは、この辺りでも、比較的大きな公園。 いくつかの公園が集まっていて、道路に出ることなく、公園から公園へと、歩いて移動出来るようになっている。 「あーぁ、サッカーボール、持って来れば良かった。」 広い芝生が広がる園内。 たくさんの親子が、サ…
今日は、特別な日曜日。 ファミレスもラーメン店も、少しお洒落なイタリアンのお店も、覗いてみた近隣の店は、とにかく、どこもかしこも、とても混んでいた。 相変わらず、腹が減ったと騒ぐあの子に、釣られるように、彼も私もお腹が空いてきた。 彼は、並ぶ…
「そうだ。展望台登ってみない?近くに住んでると意外と行かないよね。」 買い物を終え、車に乗り込むと、彼は唐突にそんなことを言い出した。 ホームセンターのすぐ近くにある25階建の建物の最上階は、展望台になっている。 これまでに一度も、登ってみよう…
家から、少し離れた場所にあるその店は、 近所のホームセンターよりも、安く買えるものが多い。 その価格に、思わず興奮しながら、店内を見て回る。 気が付くと、さっきまで、一緒にいたはずの彼とあの子がいない━━━。 ホームセンターへ出掛けると大概はぐれ…
朝食を済ませ、身支度を始めた。 「おっ、そのパーカーいいよね。俺もそんなの欲しいなぁって思ってるんだよね。」 あの子が着替えた黒のパーカーを羨ましがる彼。 「じゃぁ、今日はこれ、お父さんに貸してあげるよ。」 「え?いいの?じゃぁ、お父さんのこ…
「あぁ、腹減った。」 あの子の声に、朝食の準備を始めることにした。 休日の朝は、パンにすることが多い我が家。 手早く朝食の準備を整えると、食卓に着き、 パンをちぎりながら、何気なくテレビの声に耳を傾けた。 「さて、3月32日の今日━━━」 アナウンサ…
私は、再び彼の真横に座り、彼の顔を覗き込んで、じっと見つめた。 眉毛、まつ毛、彼の瞳に映る私、輪郭、少しだけ生えた髭、どこからどう見ても本物だ。 納得できる確信が持てたら、もう、考えることを辞める━━━。 とは言っても、大したことは、思いつかな…
その時、 ガチャ 不意に開いたドアの音に驚き、飛び退くように彼から離れ、ドアの方を見ると、そこにあの子が立っていた。 「おはよう」 眠そうに目をこすりながら、ボサボサ頭で部屋に入って来たあの子の姿に、私は思わず叫んだ。 「デカッ!!」 ━━━そう叫…
ここは、2年と2ヶ月程前まで住んでいた、彼と過ごした家だった。 驚きながら声が聞こえた方へ振り返ると、そこには、彼が立っていた。 「ちゃんと早起き続いてるんだね。関心、関心。 休みの日は、決まって寝坊してた数ヶ月前が懐かしいねぇ。」 何も言葉の…
彼がこの世を去ってから、もうすぐで4年と8ヶ月を迎えようとしている━━━。 あれから私は、少しは強くなれただろうか。 窓から空を見上げ、これまでのことを思い出していた私の携帯電話の着信音が聞こえる。 画面を見ると相手の番号は、見たことのない変な番…
四苦八苦しながら、引っ越しを終えたばかりの頃の私は、よく眠っていた記憶がある。 それまでの2年5ヶ月分の疲れを取るかのように、本当によく寝ていた。 休日などは、一通りの家事を終えると、いつの間にか眠っていたこともあった。 そうして、存分に眠った…
彼が亡くなり、あの子と2人、二人三脚で生きる毎日が始まった。 私は、笑うことを忘れ、得体の知れない何かから、必死に逃げるように、ただ焦っていた。 何処かに辿り着かなくてはならない━━━。 それが何処であるのかも分からないまま、私は、焦り続けていた…
2014年8月8日、彼がこの世を去った。 彼とは、私の夫であり、あの子━━━彼との間に生まれた息子の父親だ。 彼は、突然に心臓を患った。 救急車で運ばれた日は、医師から今夜が峠だと告げられたけれど、そこから皆が驚くほどに回復し、ICUから一般病棟に移るこ…