emi's fantasy 彼女
この公園は、相変わらずとても静かだ。 あれから、間も無くに新しい年を迎えると、その喜びも束の間に、 コロナウイルスなど呼ばれる未知のウイルスに遭遇した。 思えば、あれから大変な時間を過ごしてきた。 ここに来ることが出来たのは、とても久し振りだ…
「もう!遅い!」 彼女が先に待っていてくれたのは、これで2回目だ。 ほんの少し顔を合わせ難い気持ちのまま、ここへ来た私の中の僅かな曇りなど、 一瞬で吹き飛ばすかのように、 彼女は、いつも通り、太陽みたいな笑顔を向けてくれた。 「随分、待ったわよ…
あれから、暫くの間、ここに来ることが出来ずにいた。 彼女と顔を合わせ辛かったこともあるけれど、それよりも、 ひとりで、自分の気持ちと向き合わなければならないと思ったからだった。 あの日の彼女の言っていたことは、全部正しかった。 私は、私だけが…
彼女は、とても不思議だ。 突然に私の前に現れたと思えば、私が見ている景色をどんどん変えてくれた。 彼女には、本当に感謝している。 「あなたのことが大好きよ。あなたと出会えて良かった。」 私のこんな言葉に、彼女が嬉しそうに笑ってくれたのは、いつ…
人は、死んだら何処に行くのだろう。 答えの出ない答えを必死で探すようになったのは、 彼が亡くなってからのことだった。 「ねぇ、人は死んだらどこに行くのかな。私ね、本当のことを知りたいの。」 彼女と一緒に、チョコレートを食べたあの日から、 どのく…
「こんなつもりじゃなかったのに・・・突然、泣いたりしてごめんね。」 どれくらいの時間が経っただろうか。 漸く、気持ちを落ち着かせることが出来た私は、 彼女から離れ、ベンチへと腰掛けると、彼女も黙って、隣へと腰を下ろした。 いつものように、彼女…
今日の私は、酷く落ちている。 時々、こんなふうに、どうしようもない感情が込み上げることがある。 彼に逢いたくて、声が聞きたくて、仕方がない。 こんな発作のような感情を自分でコントロールする方法は、 未だに見つからないままだ。 彼が亡くなってから…
「私ね、向こう側の人と話す方法を見つけたのよ。」 彼女が突然に、こんなことを言い出したのは、 また別の日のことだった。 「えっと・・・何か話したの?」 「話したとも言えるのかも知れないけれど、まだ話してないとも言えるわね。 ねぇ、どんなふうに話…
私がこの公園に来るのは、いつでも不定期だ。 曜日も時間も決まってはいない。 にも関わらず、あれから、私がこの公園のベンチに座ると間も無くに、 必ず、彼女がやってくるようになった。 「あら、また会ったわね。今日は、曇り空ね。曇りの空も素敵よね。 …
「悲しい顔、してるのね。」 公共の場であるにも関わらず、いつでも静かなこの場所に、 他の誰かが来るなどと考えたことのなかった私は、突然に聞こえたその声に、 ほんの少しだけ驚いて、言葉を発することを忘れてしまった。 にも関わらず、そんな私を他所…
今日もまた、お気に入りの公園に来た。 ここは、空が綺麗に見える場所で、 人通りも少なく、ほぼ貸切で時間を楽しむことが出来る。 春になると、一面に菜の花が咲くところが、特に気に入っている。 この場所は私にとって、とても特別な場所だ。 私は、5年前…
私は、あの日、死んだのだ。 最愛の彼と共に。 肉体と、魂の一部だけが此処に残された今の私は、 もう、あの頃の私ではないのだ。 明るくて、楽しいことが大好きで、 嫌なことがあっても、 一晩眠ればすぐに元気になってしまうあの頃の私は、 今思えば、単純…