拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

2019-01-01から1年間の記事一覧

歩み -2019年-

あなたへ 2019年が終わりを迎えます。 ここ数ヶ月、ずっと慌ただしい日々が続いていた私ですが、 今日は、漸く、少し落ち着いて、 この1年を振り返ることができました。 ゆっくりと振り返ってみれば、 1年間という時間は、本当に人を成長させるものなのだと…

置き手紙

あなたへ 年末の大掃除しようよ 珍しく、自分から大掃除の提案をしてきたあの子。 これまでに見たことがなかったほどのあの子のやる気に、 私も、今年は、念入りに掃除をしようと張り切ったのでした。 やる気モード全開で、 掃除用具を片手に、家の中を動き…

秘密基地に似た場所

あなたへ 私が運転免許を取ってから、 まだ間もなかった頃のことを思い出していました。 念願のマイカーを購入し立てだったあの頃。 私にとっての車内とは、 自分だけの秘密基地に憧れていた、 幼かった頃の気持ちを思い出させてくれるような場所でした。 お…

クリスマスプレゼント -2019-

あなたへ 若かった頃のあなたと私が、 笑い合っている夢を見ました。 あれは、結婚する前の私たち。 とても楽しそうに笑う2人を、 温かな気持ちで見守るような、そんな夢でした。 ねぇ、あなた。 私たちにも、あんな頃がありましたね。 夢の中の初々しい2人…

トナカイ帽子とサンタクロース

あなたへ トナカイの帽子を嬉しそうに被って、クリスマスの日を楽しみにしていた、 幼かったあの子の姿を覚えていますか。 あれはまだ、 幼稚園へ上がる前の頃のあの子だったでしょうか。 クリスマス用品が店頭に並んだ頃に買ってあげたトナカイの帽子を、 …

男の子の食欲

あなたへ 男の子は、 中学生くらいから食べる量が増え始めるのよ これは、いつかの先輩方の言葉です。 あなたを見送り、 どれくらいが経った頃からだったでしょうか。 先輩方の話の通り、 成長と共に、あの子の食事の量は増え始め、その食欲に驚く毎日でした…

クリスマスパーティーの翌日に

あなたへ 今年のクリスマスパーティーも、とても楽しかったですね。 あの頃と同じように、あなたの席を準備すると、 あの頃と何も変わらないあなたが、 そこで笑っているような気がしました。 昨日は、きっと来てくれたあなた。 ありがとう。 あの子の成長と…

招待状

招待状 クリスマスパーティのご案内です。 是非、来てくださいね。 日時:2019年12月21日(土曜日)18時30分より 場所:家族の部屋にて 軽装でお越しください。 毎年、24日に行っていたクリスマスパーティーですが、 昨年より、日時を変えてのパーティーとな…

好きな人

あなたへ 誰かいい人、いないかな 誰かのそんな言葉に、 懐かしいような気持ちを抱きました。 思えば、過去の私も、 同じような台詞を口にしたことがあったのでした。 懐かしく感じる響きの言葉を反芻しながら、 想う人がいなかった頃の気持ちを思い返してみ…

小さな声の約束

あなたへ この時期になると、手荒れしてしまう私。 洗い物をする時に、お湯を使うせいなのでしょうか。 肌が弱い私にとって、手荒れは、この時期の悩みの種です。 私の手をまじまじと見つめ、 手、どうしたの?荒れてるね 今度、洗い物、俺がやってあげるよ …

氷柱ができる場所

あなたへ こちらでは、冬の訪れを感じる季節となりました。 よく景色を見渡してみれば、 赤や黄色に色付いていた木々たちも、 冬を迎える準備を始めているようです。 外の冷たい空気に身を竦めながら、思い出していたのは、 剣みたいな氷柱のことでした。 あ…

目薬

あなたへ 先日、仕事中に、 突然、目に違和感を感じました。 パソコンや、携帯電話。 目を酷使し過ぎたせいかと思いながら、1日を終え、 夜になり、よく鏡を見てみると、 ものもらいが出来ていました。 疲れていたのでしょうか。 早速、ものもらいのに効く目…

専属運転手

あなたへ 近頃の私は、 あの子の専属運転手かのような日々を過ごしています。 仕事から帰ると、早々に、 ここに連れて行って欲しいんだけど なんてあの子の言葉に、 えー?今、帰って来たのに って、 そう言いながらも、また車へと逆戻りです。 特に狙われる…

配偶者

あなたへ 私が初めて、配偶者『有』に丸を書く機会があったのは、 今の職場へ勤めるようになってからのことでした。 結婚してから、初めての年末調整。 配偶者の欄、有の方を丸で囲みながら、 自然と思い浮かんだのは、あなたの顔でした。 あなたと結婚して…

私がいない世界 【おわりに】

www.emiblog8.com 私のこと、看取ってね は?嫌だよ 彼を見送ってからの私は、 あの頃の2人の、 こんな他愛もないやり取りを、何度思い出しただろう。 あの頃の私は、 彼なら、私が側にいなくても大丈夫だと、 本気でそんなふうに考えていた。 物知りで、聡…

私がいない世界 【13】

四十九日の法要を迎える前日、 私は、夢の中に入るという技術を習得した。 彼らに伝えたいことは、たくさんある。 何から伝えればいい? ずっと、幸せだったよ 私と結婚してくれて、ありがとう 愛してる あなたなら、きっと大丈夫 生まれて来てくれて、あり…

私がいない世界 【12】

彼は、仕事へ復帰し、 あの子も夏休みが終わり、学校が始まった。 私だけが此処にいないままに、彼らは、 少しずつ、日常生活に戻りつつある。 私に、死後のイロハを教えてくれたのは、 花火大会でお会いした、お義父さんだった。 肉体を持たない今、私は、…

私がいない世界 【11】

花火大会の翌日、私たちは、我が家へ帰って来た。 間も無く、お盆が明ける。 今は、深夜の時間帯。 とても疲れていたのだろう。彼は、テレビの前で眠ってしまった。 『こんなに痩せちゃって。目の下に、クマできてるよ。ごめんね。』 随分とやつれてしまった…

私がいない世界 【10】

突然、誰かに肩を叩かれ、驚きながら振り返ると、 そこには、 1年半前に亡くなった彼の父親が立っていた。 私は、驚いて、思わず悲鳴を上げてしまった。 『な、な、何で?お義父さん! あっ、あの、ご無沙汰しております。』 私はきっと、これまでにしたこと…

私がいない世界 【9】

告別式を終えると、そのままお盆に入った。 漸く、彼らは休むことが出来る。 明日は、彼の実家の地域で行われる花火大会だ。 「今年も来たら?気分転換にもなるかも知れないしさ。」 遠慮がちに、彼の家族が声を掛ける。 少し迷った顔をした彼は、あの子の顔…

私がいない世界 【8】

粛々と、式が進行する。 「最後のお別れです。」 こんな言葉と共に、彼とあの子を始めに、 参列してくれた皆が、私の棺の中にお花を入れてくれた。 私の棺の中は、ピンク色のお花で一杯になった。 皆がお花を入れ終えると、 私の胸元に、彼とあの子から、そ…

私がいない世界 【7】

「告別式の当日には、 故人様が使っていたお茶碗に、ご飯を山盛りにしてきてください。 それから、お箸、湯呑み、コップ。 こちらの粉を使って、団子を作って持って来て下さいね。 数は、地域の習慣などでも異なりますが、一般的には、6個とされています。 …

私がいない世界 【6】

この姿になってから、私が声を上げて泣いたのは、 自分が息を引き取った、あの日の夜だけだ。 あの日の夜に、テレビから聴こえてきたのは、 あの子が好きなアニメの主題歌だった。 あの日は、このアニメの映画公開日だった。 静かに流れる音楽も、歌詞も、 …

私がいない世界 【5】

意味もなく、家の中をウロウロする彼に、 私は何度、同じ言葉を掛けただろう。 『ねぇ、あなた、ご飯食べて?』 何度もそう問いかけているのに、彼は全然話を聞いてくれないの。 あの子にだけご飯を食べさせる彼は、何をするでもなく落ち着かない。 『ねえ!…

私がいない世界 【4】

疲れた 眠い お腹が空いた そんな感情すら残ってはいない。 ただ、もし出来れば、少しだけ、そっとしておいて欲しい。 もう何も考えたくないし、誰とも話したくない。 そんな気持ちを、胸の奥へと閉じ込めて、 告別式までは、どうにか乗り越えなければならな…

私がいない世界 【3】

私たちは今、葬儀社にいる。 自分の告別式の打ち合わせに参加するだなんて、 なんとも奇妙だけれど、 彼とあの子が並んで座るその隣に、一応、私も座ってみた。 私の前にだけ、お茶がないこの光景に、 私は、もう、この世のものではなくなってしまったのだと…

私がいない世界 【2】

『愛する夫と息子を遺して、こんなことになるなんて! なんてことなの?』 まずは叫んでみた。 こんなに大声で叫んでいるのに、誰も見向きもしない。 夫と息子に看取られて、私は、たった今、息を引き取った。 半透明の自分の手のひらを見つめて、小さく溜息…

私がいない世界 【1】

ご臨終です その言葉を合図に 彼らは たくさんの涙を流した まだ温もりが残っているであろう手を握り まだ血色の良い頬に触れ まるで その感覚を体に刻みつけるかのように 彼らは私の肉体から手を離そうとはしなかった そんな2人の側で 私はただ 彼らを見つ…

11月22日

あなたへ 今日は、11月22日。 いい夫婦の日 だそうですよ。 カレンダーをよく見てみれば、 数字の語呂合わせや、記念日、 1年の中には、たくさんの、 いつもありがとうを伝える機会があるように思います。 いい夫婦の日。 カレンダーを眺めながら、 あなたと…

残りの命を知らないままで

あなたへ あの頃の私が、あなたとのお別れの日を知っていたのなら、 今とは少しだけ違う何かが残っていたのでしょうか。 どうにもならないことであることを理解しながらも、 私は時々、考えてしまいます。 どんな時間を過ごせれば、良かったのだろうかって。…