拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

コトバ -秋-

秋の色を 覚えていますか
秋の音を 覚えていますか
秋の風を 覚えていますか


その瞳に映った景色
その耳で感じた季節
その肌で感じた温度を
覚えていますか


一緒に過ごした初めての秋


少し肌寒い夕暮れに
ふたりで寄り添ったこと


私の温度を 覚えていますか


自然が季節に染まるように
私の中に
あなた色を見つけた初めての秋


あなたの側で感じた温度も
この髪を梳くその指の感覚も


ずっとこのままでいたいと言ってくれた その声も


私はよく覚えています


ただあなたの側に居られることが嬉しくて
意味もなく笑みが溢れていたあの頃の私は


あなたに
何を伝えることが出来たでしょうか

 

 

 

あなた

あなたへ


ねぇ あなた


ねぇ あなた


何でもない
ただ、呼んだだけ


私は、あなたと出会って、何度、あなたの名前を呼んだでしょうか。


あなたのこと、こう呼んでもいい?


出会ったばかりの私たちは、そんな初々しい会話がありましたね。


初めて、あなたの名前を呼んだ時は、
恥ずかしくて、小さな声で、名前を呼んだんでした。


あなたと家族になり、一緒に生活するようになると、
あなたの名前を呼ぶことは、
私にとっての、日常となりました。


ねぇ あなた 起きて
あなた おはよう
あなた 行ってらっしゃい
あなた おかえり
あなた おやすみ
ねぇ あなた 聞いて
あのね あなた あの子がね


時々には、


ちょっと!あなた!


なんて、
怒りながら、あなたの名前を呼んだこともありましたっけ。


あの頃の私は、
1日に、何度、あなたの名前を呼んでいたでしょうか。


あなたを見送り、
あなたの名前を口に出すことは、とても少なくなりました。


ふと、声に出して、ただ、あなたの名前を呼んでみたくなったのは、
梅雨明け間近の、とても、暑い日でした。


おもむろに、あなたの前に座って、
あなたの名前を呼んだ私の声は、
自分が思っていたよりも、ずっと小さく、
ちょっと、かすれた声でした。


初めて、あなたの名前を呼んだ時みたいに、
なんだか、ちょっと、恥ずかしかった。


そうして、あれからの私は、
1日に4回、
あなたの名前を口に出して、呼ぶようになりました。


あなた おはよう
あなた 行ってきます
あなた ただいま
あなた おやすみ


そこにはもう、あなたの返事は、聞こえませんが、
あなたの顔を見て、
私が考えた、あなたの特別な呼び名を口に出す時は、
あの頃の私に戻ったみたいで、
胸が温かくて、愛しい気持ちになります。


お互いに名前を呼び合っていた、16年間。


あなたは、何度、私の名前を、呼んでくれたでしょうか。


私を呼ぶ、たくさんのあなたの顔。


今でも、よく覚えています。

 

 

 

大人の味

あなたへ


あなたの好みのコーヒーは、砂糖を多めに入れた、甘いコーヒー。
あなたと一緒に、コーヒーを飲んでいた頃の私は、
あなたの半分程の砂糖を入れたものが好みでしたが、
今は、砂糖を入れず、ミルクだけで飲むようになりました。


そして、
あなたを見送り、しばらくしてから、
毎朝、コーヒーを飲むようになったあの子も、
いつの間にか、
ミルクだけを入れたコーヒーを、飲むようになっていました。


先日、あの子と、昼間の眠気との戦いについて話しながら、
外でのあの子は、ブラックコーヒーを飲んでいることを知り、とても驚きました。


苦いよね


って、私の言葉に、


そう?美味しいよ


なんて、ちょっぴり、大人の顔をしたあの子。


あなたが側にいてくれた頃には、
まだコーヒーに興味がなかったあの子は、
あなたの好みのコーヒーの味を知りませんでした。


あの頃のあの子にとってのコーヒーは、大人の味。


毎日、コーヒーを飲んでいるあなたの姿は、きっと、あの子にとって、
とても、大人に見えていたことでしょう。


あの子に、あなたの好みのコーヒーの味について話しながら、
私も、ブラックコーヒーは、飲めないことを話すと、
驚きながらも、
なんだか、ちょっと、勝ち誇っていましたよ。


2人とも、子供だな なんて。


あなたも私も、好まないブラックコーヒーの味を楽しむようになったあの子は、
いつの間にか、私たち、家族3人の中で、
いちばん、大人になってしまいましたね。

 

 

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