拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

家族3人の家

あなたへ

 

近頃の私は、なんだかとてもフワフワとしたまま、

あなたのことばかりを考えてしまいます。

 

先日、あなたの夢を見ました。

 

ここではない何処かへ引っ越した我が家。

家の裏側の玄関を開けると、公園へと続く小道のある素敵なその家で、

あなたも一緒に、家族3人で暮らす夢でした。

 

ここよりも広く、素敵な家の中、

ピッタリとくっついたまま、

私の側を離れようとしなかったあなたは、なんだかとても可愛いかった。 

 

あなたが家にいるだけで、

なんだかとても安心できる、あの感じ。

 

あなたがすぐ側にいるという、あの感覚。

 

私にとっての当たり前だった、あなたの側という場所で、

私は、とても安らいだ気持ちで、夢の中を過ごしていたんでした。

 

いつもなら、あなたと過ごした夢から覚めると、

素敵だったなって夢を反芻しながらも、

現実へと戻ることが出来る私ですが、

なんだか、今回は、そんなふうにすることが出来ず、

あなたのことばかりを考えてしまいます。

 

あんなに側にいたのにな

 

いつでも優しく微笑んでくれるあなたの遺影に向かって、独り言。

 

あなたは今、何を想っていますか。

 

私は今、あなたのことを想っています。

 

夢の中、私の側を離れようとしなかったあなた。

できれば、もう少しだけ、

家族3人のあの家で、一緒に過ごしていたかったですね。

 

 

 

コトバ -これから春を迎えるキミへ-

昼間のやわらかな陽ざしが

暖かくて気持ちがいい

 

春を感じられる陽気になってきたね

 

彼を送り出して

2回目の春を迎えるキミは今ごろ

ただ目の前にある試練と必死に戦っているところだね

 

今のキミはまだ

もうすぐあの日を迎えることを

知らずにいるんだ

 

晴れた空

暖かくて気持ちのいい陽ざし

 

そう

あれは5月のとても暖かな日だった

 

夏が大好きなキミにとって

2番目に好きな時期のはずなのに

あの日だけは何かが違ったんだ

 

山積みになった

やらなければならないことを全部放り投げて

何時間そうするつもりなのか

空を仰ぐ銅像にでもなったかのように動かないまま

ボーッと空を見上げる

 

そうして

キミはどこか遠くへ

逝きたいと思ってしまうんだ

 

どこまでも

どこまでも

深い闇の底まで堕ちていく

 

死にたいわけじゃないけれど

生きたくない

 

そんなことを考えていたあの日

泣いていたのか

泣くことさえ出来ずにいたのか

鮮明な記憶が残っていないあの日のキミは

まるで別人だったんだ

 

私はキミに

敢えて頑張れとは言わないよ

 

だって

もう充分に頑張ってる

 

だから

キミは大丈夫だよ

とだけ伝えておくよ

 

あれから2年と10ヶ月後のキミは

今ここに生きている

 

残念ながら

彼を想いながら辛いことも

泣いてしまうことも

今のキミと変わらないけれど

未来のキミは

時々後ろを振り返りながらも

頑張って前を向いてる

 

そう「頑張って」前を向いてるよ

 

今のキミが忘れてしまった夢を思い出して

再び自分らしさを取り戻すことが出来た

 

夢?年甲斐もなく?

なんて君は言うのだろうか

 

夢を持つことに

年齢なんてあまり関係ないのかも知れないよ

 

いや絶対に関係ない

 

いくつになっても夢は持った方がいい

私はそんなふうに思っているよ

 

キミには

これからも乗り越えなくちゃいけない壁が

いくつもあって

 

あーぁ もう嫌だよ

 

そんなふうに途方に暮れてしまう時もあるけれど

キミはちゃんとここまで来れたよ

 

だから大丈夫

安心して堕ちておいで

 

キミがここに辿り着く頃

私は何処にいるのだろう

 

少なくとも

此処じゃない何処かにいたいと思っているよ

 

先へ

先へと歩みながら

今度はきっと

ここにいるキミを想うのだろう

 

よく頑張ったねってキミに称賛の言葉を送りながら

私はここに辿り着いたキミに

新たに伝えたいことを見つけているのかも知れない

 

私は私のペースで歩を進めながら

キミがずっと

自分のことを信じることが出来るように

ここから先も懸命に頑張るよ

 

大丈夫だよ

 

キミはね

きっと

キミが思っているより

ずっと強いんだよ

御霊前と御仏前

あなたへ

 

御霊前、御仏前、どっちの袋だったっけ?

 

いつも分からなくなってしまう私に、その都度、

どちらの袋を使えばいいのかを教えてくれたあなた。

 

覚えなくてもいいことだよ

 

あなたはいつでも、

そんなふうに言ってくれていたんでした。

 

毎回、聞けばいい

覚えなくていいよ と。

 

そんなあなたが、一度だけ、教えてくれたこと、

今でもよく覚えています。

 

四十九日を迎えるまでは、霊でいるから御霊前

そこから先は、仏様になるから御仏前なんだよ

 

その説明は、とても分かりやすく、

あの時、初めて、それについてきちんと覚えることが出来たんでした。

 

思えば、あれは、

あなたと一緒に参列した、最後の法事の準備をしていた日のことでした。

 

あなたを見送り、何度かの告別式や法事に参列しましたが、

私は、誰に聞かなくとも、その準備が出来るようになりました。

それは、あの日のあなたの言葉のお陰でした。

 

先日、あなたのお父さんの七回忌を迎えました。

法事へ行く準備を整えながら、

あなたの言葉を思い出していました。

 

覚えなくてもいいことだよ

そんなふうに言ってくれていたあなたが、最後に、

私に分かりやすいよう、説明してくれたのは、

私がもう、誰にも聞かなくてもいいように、だったのかなって、

ふと、そんなことを考えました。

 

あの頃のあなたは、とても元気なあなたでした。

あれから1年後に、あなたが此処からいなくなってしまうだなんて、

誰も予想だにしていなかったけれど、

思い返せば、

あなたは、ただの偶然を装いながら、

ひとりでやらなくてはならないことへのヒントを、

たくさん遺してくれていました。

 

どこにでも、隠れて待っていてくれるあなた。

 

そこに隠れて待っていてくれたあなたの声に、耳を傾ければ、

何故か、大抵のことが出来てしまう。

 

辛いことの方が多いように見えて、実はよく出来ている。

それが人生なのかも知れませんね。

 

お父さんの七回忌。

無事に終えることが出来ましたよ。

 

あなたのお父さんも、そちら側で元気にしていらっしゃるでしょうか。

どうぞ、宜しくお伝えくださいね。