拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

お盆のこと

あなたへ


もう、そちらへ着いたでしょうか。
あなたを、そちら側へ送り出し、3度目のお盆。
今年は、ゆっくりと寛いでくれましたか?


楽しみで・・・
楽しみ過ぎて、ちょっぴり緊張しながら迎えたお盆初日の朝は、
いつもよりも早くに目が覚めました。


あなたへのいつもの挨拶。
おはよう の代わりに、おかえり って、
そう、声を掛けたけれど、そこに、
あなたの気配は、何も感じませんでした。

あなたの顔は、何故か、いつもと違って、ただの紙に見えました。


間違えて、前の家に帰ってしまって、
少し慌てたあなたの様子を思い浮かべ、
思わず、あなたへの目印の提灯を確認してから、
あなたと私のコーヒーを淹れ、
私の身支度を整えた頃でしたね。


微かに、あなたが側にいると思いました。


その微かな気配に呟いたおかえりの声に、
あなたは、答えてくれたのでしょうか。
ただいま って、あの頃みたいに。


お盆初日だけ、仕事だった私。
あの日1日、家にいたあの子は、私が帰って来ると、
お昼寝をしていたら、あなたの夢を見たと、話して聞かせてくれました。


あの子が通う学校は、校則が緩く、
ピアスの穴を開けることは自由。
夏休みに入り、ピアスの穴を開けたあの子に、
ピアス、開けたんだね と、あの子の耳を確認したあなたの様子。


それから、
バイクの免許とるの?と、
最近、あの子が興味を持っている事について、話をしたそうですね。


夢の中のあなたは、髪が少し長めで、茶色に染めていたよ。
あの日、棺に入れた、お気に入りの服を着ていたよと、話してくれました。


あの子、大きくなったでしょ?
ピアスを付けていた事は、驚いたでしょうか。


あの子のピアスを見た時に、
あなたは、特に、良いとも、悪いとも言わなかったそうですが、
本当は、
少し、早いんじゃない? なんて、言いたかったでしょうか。


私達の頃は、もう少し、大人に近づいてから、
ピアスの穴を開けた気がしますが、
近頃の子達は、そうでもないみたいですよ。
あの子に言わせれば、時代が違うそうです。


久し振りに、あなたの夢を見たあの子は、
あなたに逢えたことが、とても嬉しかったようで、
帰って来た私に、興奮気味で、ずっと、あなたの話をしていましたよ。


あの子と2人、あなたが帰って来たんだねと、話していた様子を、

あなたは、こっそりと、見ていたのでしょうか。


そして、あの子に、
私の夢に、あなたは、出て来たのかと聞かれました。


お盆期間中、私は、
一度もあなたの夢を見る事はありませんでしたが、
何故か、この期間、よく眠れました。


目覚ましの音も全く聞こえない程に、
よく眠ったのは、とても久し振りでした。


お陰で、連日、朝寝坊をしてしまいましたが、
それは、あなたが側にいてくれた頃、
何の不安もなく、眠っていたあの頃のようでした。


久し振りに、帰って来たあなたは、私に眠る時間をくれたのかと、
良いように解釈してしまいました。
だって、普段通りの生活に戻った今日は、
きちんと、いつも通りに目が覚めましたから。


今年のこちらの夏は、夏らしくない涼しさで、
私は、ちょっと、寂しかったけれど、
暑さが苦手だったあなたにとっては、過ごしやすかったでしょうか。


ずっと、楽しみにしていたお盆。
なんだか、あっという間に、過ぎてしまった気がします。


あなた
また来年、きっと帰って来てくださいね。
楽しみに、待っています。

 

 

 

最後の言葉

あなたへ


あなたのその姿を最後に見たのは、
丁度、3年前の今日でした。


あなたが息を引き取り、一度は決めた覚悟でしたが、
1日、また1日と時間が経つにつれ、
私は、この日を迎える事が、怖くなっていきました。


その姿を残したまま、
いっそのこと、このまま時間が止まってしまえばいいと。


本当は、迎える事が怖かった告別式の朝、
私は、気が付きました。


きちんと式を執り行う事は、
きっと、あなたにしてあげられる最後のことなんだと。


3年前、この日の朝は、
あなたのために、立派に喪主を務めようと、
覚悟を決めた朝でした。


参列くださった、お一人お一人のお顔を拝見し、
できるだけ、丁寧に挨拶をしました。
私の友人の顔が見えた時には、なんだか、安心して、
思わず、泣いてしまったけれど、
出来るだけ、気丈に、
あなたの妻として、精一杯の事をしようと心掛けました。


あの日の私の小さな目標は、
最後の喪主の挨拶を、しっかりとする事でした。


マイクの前に立つと、
何故だか、私のすぐ後ろに、あなたの気配がありました。
それは、なんだか、あなたも一緒に、
みなさまへ挨拶をしているようにも感じました。


私が、落ち着いて、挨拶をする事が出来たのは、
きっと、あなたのお陰です。


あの日、あなたのお母さんが、
あなたのその姿に掛けた、最後の言葉を聞いていましたか?


お母さんの子に、生まれて来てくれて、ありがとう


式が始まる前に、静かに、あなたに声を掛けていた、
あの日のお母さんの姿、今でも、はっきりと覚えています。


お母さんの言葉を聞きながら、
あなたがちゃんと、
聞いてくれているといいなと、思いました。


きっとまた、
お母さんのところに、生まれて来るんだよ?


あなたをたくさん、
愛してくれたお母さんの元に。

 


P.S
こちらでは、明日から、お盆になります。
今年は、何時頃に帰って来ますか?

また一緒に、コーヒーを飲みましょうね。
早起きをして、楽しみに待っています。


今年は、引越しをしたので、
あなたが、道に迷わないか、ちょっと、心配です。
例年通り、あなたが好きだったキャラクターの提灯を準備しておきました。


ここですよ。


気を付けて、帰って来てくださいね。

 

 

 

 

あの子の道

あなたへ


高校生になったあの子は、
すっかり、新しい生活に慣れると、徐々に、勉強をしなくなりました。


学校での、友達との時間は、楽しいけれど、
授業は、つまらない


何のために勉強するのかな


頑張って勉強しても、それが将来の役に立つとは思えない


これは、勉強をしなくなってから、時々、
あの子が口にした言葉でした。


受験勉強。
本当に、あの子は、よく頑張りました。


頑張り続けるということは、とても難しいもの。
本当は、こんな事を言ってはいけないのかも知れませんが、
やる気が出るまで、
今は、遊んでみるのもいいのではないかと、
最低限の宿題以外、勉強に関しての口出しをすることはせず、
私は、あの子を見守る事にしました。


そうして迎えた夏休み。
あまり、勉強をしている様子は見られないまま、
夏休みが、半分程を過ぎた先日、
あなたの命日の日の事でした。


普段は出掛けることが多いあの子ですが、
あの日は、1日、家にいた様子。


仕事から帰り、
出掛けなかったんだね
って、私の言葉に、
今日は、お父さんの命日だから、家にいたよ と、話してくれました。


この3年間が、長かったのか、短かったのか、
よく分からない3年間だったね


あの子はポツリと言いました。


そして、あの日、あの子と、将来についての話をしました。


頑張って、入った高校だけれど、
今は、少し、後悔しているということ


交通費を出して貰ってまで、
わざわざ通う理由が分からなくなってしまったということ


学校は、楽しいけれど、
そこでする勉強に、意味を見つけられなくなってしまったこと


学校を辞めたいわけではないし、卒業はするつもりだけれど、
今、自分のしている事は、将来のためになるのだろうかということ


将来、進みたいと考えていた道が、変わったこと


時々、黙ったり、考え込んだり、
頭の中を整理しながら、ゆっくりと話すあの子は、言いました。


お父さんみたいになりたい と。


「つくる」
が仕事だったあなた。


時々、話して聞かせてくれた、あなたの仕事の話を、思い返しながら、
あの子は、あなたにずっと、憧れていたんだと、気が付いたようでした。


そして、あの子は、言いました。


つくった人が、この世から、いなくなってしまっても、
その人がつくったものが、此処にあるって、凄いよね と。


まだ、何をつくりたいのかは、漠然としているようですが、
何処を目指していいのか分からなくなったあの子の瞳が、
再び、輝きを取り戻したように見えました。


小さな頃から、料理が好きで、
大きくなったら、自分のお店を持ちたいと、
夢見ていたあの子。


あなたを見送り、医療関係の仕事で、
病気で苦しんでいる人や、その家族の力になりたいと、
将来の夢が変わり、
少しでも、いい高校に進学しなくてはと、
必死で勉強に向き合ったあの子。


一歩、夢に近づくことが出来たあの子は、
再び、迷いながら、その先に見えたのは、
随分と、遠くに逝ってしまった、あなたの背中でした。


悩んだり、迷ったり、どのあの子も、
一生懸命に、ここまで成長してきました。


あなたを見送ってからの3年間。
やっぱり、あの子と私には、
まだ、とか、
もう、とか、
時間の経ち方に、何も付けることのできない、
ただの3年間でしたが、
あれから、丁度、3年目のあの日、
あの子は、あなたに憧れている自分を見つけたようです。


でも、本当はね、
私は、知っていました。


あの子は、いつの日か、こんなふうに、あなたを追いかけようとすることを。


だって、あなたは、世界一、かっこいいもの。


いつの日か、
あの子は、あなたの背中を超えたと思う日が来るのでしょうか。


超えられるものなら、超えてみろ


あの日の、あなたは、そんなふうに、笑っていたのでしょうか。

私と一緒に、あの子の話を聞きながら。

 

 

 

 

 

 

 

www.emiblog8.com