読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

優しい嘘

あなたへ


あなたを見送ってからも、
夕方に車の音が聞こえると、
つい、手を止めて耳を澄ませてしまう私は、ここへ越してきても相変わらずで、
その癖は抜けないようです。


今日もまた、車の音に、手を止めて、
思わず苦笑いしながら、
この時間に、ワクワクとした気持で、
あなたを待っていた頃を思い出しました。


休日が少なく、仕事が忙しかったあなただけれど、
仕事が少し早く終わった日には、
電話をくれましたね。


今から帰るよ。3人で出掛けようか って。


近所のショッピングセンター、食事。
時間がないながらも、
家族の時間を作ってくれていましたね。


そんな時のあなたは、
疲れた顔を見せる事はなく、
必ず、笑顔で帰って来てくれました。


玄関を開けると、
たたいま。行こうか って。


そうして、家に帰ると、
いつの間にか、眠っていたあなた。


それでも、
疲れていた訳じゃないと、
寝起きのあなたは、
優しい嘘をついてくれました。


俺は嘘が嫌いだ


そう言いながらも、
いくつもの優しい嘘を遺してくれましたね。


きっと、これから先も、
夕方の車の音に、私は、思わず手を止めるのでしょう。


そうして、あなたの優しい嘘と、
あの頃、ワクワクとした気持で、

あなたを待っていた時間を思い出すのでしょう。

 

 

 

 

応援団

あなたへ


今日は、仕事がお休みでした。
外出の為、久し振りに、
あの子が通っていた小学校の前を通ると、
運動会の練習をしていました。


あの子がランドセルを背負って、
あの小学校へ通っていた頃が懐かしく、
昨日の事のように思い出されました。


毎年の運動会、とても、楽しみにしていましたね。


私がお弁当を作っている間に、
朝の場所取りは、
あなたが担当してくれましたね。


あなたが選ぶ場所は、
いつでも、ベストポジションで、
日が高く、暑くなる頃には、
日陰になり、快適な1日を過ごす事が出来ました。


1年生だったあの子は、
上級生が務めた応援団長に憧れ、
僕も大きくなったら、応援団長になりたいと、
瞳をキラキラと輝かせていましたね。


どの競技も、可愛らしかった1年生から、
年々、力強く、逞しい姿へと変わっていきました。


そうして、6年生になると、
あの子は、夢を叶え、
紅組の応援団長を務めましたね。


団長の証。
紅組のタスキを掛けて、堂々と入場したあの子の姿に、

感極まり、泣きそうだったと言ったら、
あなたに笑われてしまいましたね。


あの時を機会に、ビデオカメラを購入し、
あなたは、ビデオ撮影を、
私は、写真撮影を。

私達は、あの子の一番の姿を残そうと、
それぞれ、校庭を走り回ったんでしたっけ。


そうして、1日が終わり、
帰宅早々に、あなたが撮影してくれたビデオを3人で見ましたね。


あの年は、紅組の優勝でした。
ビデオの一番最後には、
大きなトロフィーを持ったあの子と、
たくさんの友達への、インタビューが映っていましたね。


あなたの、
優勝おめでとう。今の感想は?
そんな声に、
元気に答える子供達の姿が、映っていました。


いつの間に、インタビューしたの?
なんて、私の言葉に、
これ、いいでしょ?って、
嬉しそうだったあなた。


私の思いつかないやり方で、
素敵な1日の最後を残してくれましたね。


今の私は、まだ、
あの時のビデオを見ることは出来ないけれど、
あの日の、あなたの言葉も、
どんな声だったのかも、
今でも、よく覚えています。


あなたは、あの日の、あの子の姿を、
覚えているでしょうか。


あれから、4年が経ち、
高校生になったあの子は、
夏の野球大会に向けた、応援団に入りました。


さすがにもう、
私が見に行く機会はありませんが、
空の彼方、
あの子の立派になった姿を、見てやってくださいね。


その時は、あの子が気が付かなくとも、
あなたは、あの子に問いかけるのでしょうか。
今の感想は? って。

 

 

 

 

老夫婦

あなたへ


先日、仕事帰りに、
スーパーへ寄った時のことです。


店の駐車場に車を停めると、
買い物袋を下げ、
仲良く手を繋いで歩く、
老夫婦を見かけました。


お互いを気遣いながら、ゆっくりと、
駐車した私の車の前を通り過ぎ、
自分たちの車の方へと歩いて行った老夫婦。


そんな2人から、
目を離すことが出来ず、
微笑ましくも、胸が痛くて、
涙が溢れそうでした。


あなたを見送ってから、
私が気になるのは、いつも老夫婦で、
きっと、私には、
まだ経験した事がないような、
ゆっくりとした時間の中に生きている人たちを見ると、
相変わらず、目で追ってしまいます。


そして、思わず、涙を堪える私は、
やっぱり、強くはないんだと思い知らされます。


あれから、数日が経ちましたが、
繋いだ、皺のある2人の手を忘れる事が出来ません。


その手に感じる温もりが、ずっと続きますように。


あの時、偶然見かけた老夫婦が、
いつまでも、幸せでいられますようにと、
願いました。


今日も、ちょっと暑かったけれど、
空が綺麗で、
気持ちのいい風が吹いていました。


あの日の老夫婦を想い、
何だか、胸が温かく、
ほんの少しだけ、ため息が出てしまいました。

 

 

www.emiblog8.com