拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの子のヒーロー

あなたへ

 

先日、あの子が、社会人の先輩から、
空いてる日、俺の会社でアルバイトしない?って、
こんな誘いを受けました。


聞けば、
あなたが頑張ってくれていた仕事と同じ職種のアルバイト。


あなたが就いていた仕事に興味を持っていたあの子は、
その誘いにとても喜びました。


汚れてもいい服装で来てね
先輩からのそんな言葉に、
作業着、買わなくちゃ なんて、とても張り切った様子。


あなたが作業着を買っていたお店に行くと、
あの子は、あなたが好んで着ていたメーカーのものを選びました。


これ、お父さんが着ていたものと同じだよね
ここの文字、覚えてたよ


そう言って、小さく記してあるメーカーの文字を指差したあの子。


デザインが変わることなく、
あなたが着ていたものと全く同じものを買うことが出来たあの子は、
とても喜んでいました。


帰宅早々に、


作業着を着てみたい


そう言って、買ったばかりの作業着を試着したあの子は、
作業着上下に、あなたの真似をして、帽子を被り、


お父さんに似てる?


そう言いながら、私のところに見せに来てくれました。


あの子の声に、顔を上げると、
私の目の前には、
まだ若かった頃の、あなたの姿によく似た子が立っていました。


帽子を深く被ると、驚くほどに、あなたによく似ているあの子。


もしも、
あなたと2人で並んで写真を撮ることが出来たなら、
きっと、あなたもとても驚くことでしょう。

 

一瞬、言葉に詰まりながらも、
とてもあなたに似ていることを伝えると、
あの子は、
お父さんを思い出して、悲しくなる?泣かないでね
なんて言いながらも、
あなたに似ているの言葉が嬉しかったようで、
顔の角度を変えては、
この角度はお父さんに似てる?
じゃあ、これは?って、色々なポーズをとっては、
あなたに似ているかどうかの確認をしたあの子は、
私の返事に、とても満足そうでした。


そうして、脱いだ作業着を眺めながら、
このアルバイトの誘いをいただいたことで、
鮮明に思い出したあなたの話を聞かせてくれました。


作業着を着ていたあなたの姿。
深く帽子を被っていたあなたが、とても格好良く見えたこと。


普段は、あなたのことをあまり口にしないあの子ですが、
あの日は、あなたのことをたくさん、話してくれました。


そうして、迎えたアルバイトの朝。
いつもなら、なかなか起きないあの子ですが、
あの日は、違いました。


朝だよ の私の言葉に、飛び起き、
早々に朝の支度を済ませ、
嬉々として、出掛けて行ったのでした。


予定よりも早くに帰宅したあの子は、
初めて体験したあなたと同じ世界が、
どんなに楽しかったかを話して聞かせてくれました。


これまで、漠然とあなたに憧れを持っていたあの子でしたが、
今回、実際にあなたと同じ職種を体験したことで、
また新たな自分を見つけたようです。


帰宅してからも、作業着を脱ごうとしなかったあの子。
着替えたら? って、私の言葉に、


汚れてないから、このままでいいでしょ?
今日は、ずっとこの格好でいたいんだよ
この気持ち、分かるでしょ?


そう言いながら、あの子は、憧れだったあなたと同じ作業着で、
あの日を夜まで過ごしました。

 


パパ、かっこいいね


あなたの足に纏わり付いていた小さなあの子の姿を、

覚えていますか。


靴のサイズも、
身長も、
あなたを超えた16歳のあの子にとっても、
あなたは、あの頃と変わずに、
あの子の一番のヒーローです。

 

 

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試練

あなたへ


結婚とは、試練を乗り越えるためのものであり
結婚相手は、共に試練を乗り越える相手である


先日、こんな言葉を目にしました。


あなたと家族になり、過ごした日々。
思えば、一緒に、たくさんの試練を乗り越えて来ましたね。


あなたと2人だからこそ、
乗り越えることが出来た試練もたくさんありました。


普段は喧嘩も多かった私たちですが、
大きな困難を前にした時、私たちは、協力し合い、
思っていたよりもスムーズに問題を解決することが出来ました。


苦難を目の前にした時の私たちは、
自分たちが考えているよりも、
ずっと、大きな力を発揮することが出来たこと、
今でも、よく覚えています。

 

共に苦難を乗り越えた先では、
その苦難を乗り越える前よりも、
更に、絆を深めることが出来たのでした。


結婚相手は、
共に試練を乗り越える相手である


確かに、そうなのかも知れません。


私は、あなたとだから、
どんな試練も乗り越えることが出来ました。


あの頃のことを思い返しながら、
あなたと一緒に試練を乗り越えたからこそ、
今の私があるのだということに気が付きました。


今の私が、
時々、後ろを振り返りながらも、前に進もうとするのは、
あなたと一緒に試練を乗り越えてきた私だからなのだと。


あなたと過ごした当たり前だった日々。
私たちは、一緒に、試練を乗り越えながら、
たくさんのことを学び、成長していたのですね。


私と一緒に、試練を乗り越え続けてくれたあなたへ、
ありがとう。

 

 

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菜の花の咲く公園で -2018-

あなたへ


今日、仕事がお休みだった私は、
いつか、あなたとあの子と、3人で行った公園へ、散歩に出掛けました。


特に変わったものは何もないけれど、
時々、近くを電車が走り、
とても静かで、春には、菜の花がたくさん咲く私のお気に入りの場所。


最後に、この公園に行ったのは、
昨年の春、菜の花が咲いている頃に、あの子と出掛けた日でした。


今まで、ひとりで散歩なんてしたことがなかった私ですが、
何故だか、急に思い立って、今日は、ひとりで出掛けました。


園内を散歩しながら、
あなたとあの子が転がって遊んだ芝の坂へ行きました。


あの頃みたいに、坂の上に座り、
あの頃のあなたとあの子のことを思い出していました。


2人とも、背中を芝だらけにしながら、たくさん、笑っていましたね。
そんなふたりにつられて、私も一緒に笑ったのでした。


あの頃の私たちを思い出しながら、園内を見渡すと、
綺麗に整備された、様々なベンチのあるスペースを見つけました。


まだ新しそうなそこは、
恐らく、昨年は、なかったものでした。


ベンチに座り、
ゆっくりと形を変えて行く雲を、飽きることなく眺めながら、
暫くの時間を過ごしました。


遊歩道より、少しだけ高い場所のそこは、景色が良く、
なんだか、とても落ち着くところで、
ずっと、そこに居たくなるような、素敵な場所でした。


今日は、気持ちのいい天気。
空が綺麗で、
たくさんの空の写真を撮りました。


今日は、お気に入りの場所に、思いがけず、更に素敵な空間を見つけることができ、
素敵な1日を過ごすことが出来ました。

 

 

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