あなたへ
俺の彼女は、6つ歳下なんだよね
6つの歳の差って良いらしいよ
仲睦まじい、だからね
何の前触れもなく、私の中に突然に蘇ったのは、
いつかの先輩の言葉でした。
あれはまだ、あなたと出会う前の頃のこと。
当時の私の勤め先の先輩との恋話の中、
歳の差についての話になったのでした。
あの頃の彼の言葉は、きっと本当だったのでしょう。
あれから彼は、6つ歳下の彼女と結婚し、
やがて、お父さんになりました。
不意に蘇った先輩の言葉を反芻してみれば、
ふと気が付いたのは、今の私たちの年齢差でした。
ねぇ、あなた。
今の私たちって、6つの歳の差。
そちら側とこちら側。
今年の私たちは、どうやら仲睦まじい年齢差があるようです。
あなたの誕生日を迎える度に、
そして、私がこの世界でひとつ、歳を重ねる度に、
胸の奥へと様々な痛みを見つけて来た私ですが、
突然に蘇った先輩の言葉を反芻してみれば、
これまでには見つけることの出来なかった、
全く別な視点を見つけることが出来たような気がします。
今の私の年齢限定で、
4つ年上だったはずのあなたとの仲睦まじい年齢差を経験出来るだなんてね
普通はこんな経験、出来ないよね
なんてこんなふうに語るには、無理があり過ぎるけれど、
きっとね、6つの歳の差を、
仲睦まじいと表現した先輩の言葉が蘇ったからこそ、
この人生を選んだ、この年齢の私にだけ見つけられるものが、
あるのかも知れないなと思いました。
仲睦まじい年齢差。
こんなふうに今の私たちの歳の差を表現してみると、
なんだかこの年齢の私は、
特別な年齢を過ごしているのかも知れないなって、
そんなふうにも思えて来ました。
あなたと過ごした16年間には、
きっとたくさんの課題が詰め込まれているのだと、
いつかの私はこんな手紙を書きましたが、
折角、新たな視点を見つけることが出来たのだから、
あの頃のあなたから、何か素敵な答えを見つけることが出来たらいいな。
仲睦まじい、だからこその素敵な答えを。