拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

コトバ -100年後-

梅雨が明けたばかりの夏空に目を細めながら
ふたりが出会った夏を思い出していたよ


あなたが
どんなふうに笑って


あなたと
どんな話をしたのか


日に焼けた肌に
ブレスレットがよく似合っていたね


私を見つめるその瞳も
私を呼ぶその声も
逞しい腕も


全部大好きなあなたに出会えた夏の季節が
今も大好きだよ


今度はいつ逢えるかな


あの頃と同じ空の下
次のデートの約束をするみたいに
空の彼方に問いかけてみた


次に私の名前を呼んでくれるのは
いつですか


次にその手の温かさを感じることができるのは
いつですか


次にその頬に触れることができるのは
いつですか


この問いに誰も答えてはくれないから
私が決めるよ

 


100年後の夏にまた逢おう

 


きっと大丈夫
出会えるはずだよ


あなたを探せるように
その時の私も夏が大好きなはずだから


何年経っても きっと変わらない夏の空の下
100年後の私も
出会った瞬間に思うのでしょう


この人だ
やっと会えたねって


あの夏と同じように私はきっと
ずっとあなたを探していたことを感じるのでしょう


生まれ変わって
この記憶が消えてしまっても
あなたが放つ「特別」だけは見逃さないよ


あの夏によく似た
青空と風が心地よくて
眩しい日差しに目を細めながら
ふとそんなことを考えたよ


100年経ったら
きっとあなたを探しに行くから
あなたはあなたのままでいてね


きっとこの空と変わらない100年後の夏の空の下


何も知らない私たちは
あの夏みたいに
また恋をするんだね

 

 

OFUSEで応援を送る

 

 

ホタルがいる公園

あなたへ


昨年の丁度、今頃の時期に、
あの子と一緒に、ホタルを見に行きました。


あの頃のあの子は、


また来年も、絶対に来ようね


初めて見たホタルに感動しながら、
そんなふうに言ってくれたのでした。


ホタルの時期だけど、今年も見に行く?


先日、あの子に、こんなふうに声を掛けてみましたが、


今年は、行かなくてもいいかな
友達と遊びに行ってくるね


なんて、あっさりとお断りをされてしまいました。


昨年のうちに、
あの子に、ホタルを見せてあげることが出来て良かった。


初めて見たホタルに、
星が飛んでいるみたいだと、
無邪気に笑うあの子の顔を見ることが出来て良かった。


あの子の返答に、この1年での成長を感じながら、
そんなことを思いました。


恐らくもう、あの子は、
私と一緒に、あの公園へ出掛けることも、
一緒に、ホタルを見に行くこともないのでしょう。


次にあの子がホタルを見るのは、
あの子が、お父さんになった頃でしょうか。


その時には、
あの子の大切な人と一緒に、小さな手を引いて、
あの公園に出掛けるのかも知れませんね。


その時まで、
ホタルがいるあの公園が、
そのままであってくれたらいいなと思いました。

 

 

OFUSEで応援を送る

 

 

www.emiblog8.com

 

 

お線香の香り

あなたへ


あなたを見送り、どれくらいが経った頃からだったでしょうか。


家の中、お線香をあげたわけでもなく、
あなたがいる部屋でもないのに、
時々、微かなお線香の香りがすることがあります。


それは、
例えば、


洗濯をしている時、
晩ご飯の支度を始めようとしている時、
考えごとをしていて、ふと、顔を上げた時。


あれ?
そう思った瞬間に、
香りは消えてしまうけれど、
決して気のせいではないその香りに、
私は、あなたのことを考えずにはいられませんでした。


いつでも突然に感じる微かなお線香の香りは、
一瞬、肩の力が抜けて、
穏やかな気持ちになれるような、不思議な香り。


それはなんだか、あの頃みたいに、
ねぇ、何してるの?
今日のご飯、何?って、
不意にちょっかいを出しに、
私の側に来ていたあなたによく似ている気がします。


あなたなの?


思わず、あなたがいる部屋に行っては、
何度も、あなたの顔を確認してしまう私に、
あなたは、いつもの穏やかな顔で、こちらを見つめるだけ。


私たちがあなたを想うように、
あなたも私たちを想ってくれているのでしょうか。


ここにいるよ


不意にお線香の香りを感じる度に、
あなたからのそんなメッセージが届いているような気がしてしまいます。

 

 

OFUSEで応援を送る