拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

コトバ -言葉に出来ないもの-

例えば

あの時とかあの時

 

それから

あの時も

 

彼を見送ってからの私には

度々不思議な出来事が起こった

 

それらのほんの一部だけを

言葉に表現しながらも

その殆どは

この胸の中へと納めたまま

誰にも話してはいない

 

いや

話すことも文字にすることも出来なかった

と言った方がいいのかも知れない

 

不思議な出来事の数々

 

特に

あの時とか

あの時のことを

ふと誰かに話してみたくなって

言葉を探したけれど

どんなに努力をしてみても

それを完璧に表現出来る言葉が見つからなくて

結局は

その感覚を体に覚えたまま

言葉にすることを諦めた

 

どうにか言葉にしようと

無理に言葉に当てはめてみれば

途端に

厳かだったはずのその重さは消えて

ただ薄っぺらな

偶然に過ぎないような事柄へと

変化してしまうように感じるのだ

 

ただの偶然だったのか

 

不思議な出来事の数々を

ゆっくりと思い起こしながら確認してみる

 

偶然?

あれも

あれも

全部 偶然?

 

それにしては

彼が息を引き取った日から偶然が多過ぎる

それも

彼を連想しないではいられないような偶然ばかりだ

 

今の彼が操るのはきっと

言葉で扱うことさえ憚られる高貴なチカラ

 

そう

そんなふうに表現するのが正しいのだろう

 

そもそも

それを表現するだけの言葉など

初めから

この世には存在しないのかも知れない

 

私の身に起こった不思議な出来事の数々は

それほどまでに重々しい雰囲気を纏っていた

 

彼は確かに何処かに存在し

その高貴な雰囲気を漂わせて

偶然にも似たやり方で

時にその想いを伝え

そして

時に寄り添ってくれているのだろう

 

目に映ることもなければ

言葉にすることすら出来ない

不思議なチカラと言うものは

確かに存在するのだろう

 

 

 

餅ピザ

あなたへ

 

お正月のお餅、どんなふうにして食べてます?

まだ幾つか余っているんです

 

それなら、餅ピザがお勧めよ

絶対に息子さんも喜ぶわよ

 

そう言って、餅ピザの作り方を教えてくれたのは、職場の方でした。

 

余ったお餅を使って、餅ピザに挑戦したのは、昨年のこと。

想像以上の美味しさに、あの子は、とても喜んで食べてくれました。

 

次のお正月にも、餅ピザを食べようね

 

昨年は、そんなふうにあの子と約束をしたのでした。

 

今年に入ってから、もう、何度餅ピザを作っただろう。

具材を変えて、新しい味に挑戦しながら、

何度作っても、あの子は、とても喜んで食べてくれます。

 

これ考えた人、マジで天才

 

先日のあの子の口からは、こんな言葉が出てきましたよ。

餅ピザを教えてくれた職場の方には、本当に感謝ですね。

 

まだ少しだけ残っているお餅も、

餅ピザとして食卓に並ぶ予定です。

 

これはね、餅ピザって言うんだよ

 

あなたの場所へお供えしながら、

あなたなら、どんなふうに喜んでくれただろうかと、

思わず想像した私の中に浮かんだのは、

あの子と同じように、大きな口を開けて、

餅ピザを頬張るあなたの姿でした。

 

あなたが此処にいてくれたのなら、

ひとつでは足りない餅ピザに、

 

もっと食べたい

 

なんて、2人が声を揃えたのでしょう。

 

そんなあなたとあの子の声に、私はきっと、張り切って、

じゃぁ、もうひとつ作ろうかって、

キッチンへと急ぎながら、

そこに、小さな幸せをみつけることが出来たのでしょう。

 

あなたを見送ってから、

幾つくらい、料理のレパートリーが増えただろう。

またひとつ、我が家の定番メニューが増えました。

 

料理が苦手な私ですが、

あの頃に比べたら、随分、料理も上達したよ。

あなたにも、食べて欲しかったな。

 

ねぇ、あなた。

やっぱり、まだまだ、一緒にいたかったね。

 

 

 

月のうさぎ

あなたへ

 

昨夜は、眠る前に、ベランダに出て、月を眺めていました。

漆黒に浮かぶ丸い光に、

ふと、思い出したのは、幼い頃のことでした。

 

あれは、私が幾つくらいの頃だっただろう。

 

あなたと出会うずっと前の、幼かった私には、

月の中に、うさぎが見えていました。

 

月には、うさぎが餅つきをしている模様ある、なんて言われているけれど、

そうではなくてね、

私には、大きなうさぎが、こちらを見ているように見えていたの。

 

窓の外に浮かぶ月を眺めながら、

月には、本当にうさぎがいるんだって、感動したこと、

今でも、よく覚えています。

 

お父さん、月にうさぎがいるよ

ほら、見て?うさぎもこっちを見てるよ

 

私の声に、夢があっていいねと、笑った父の言葉に、

幼いながらも、

大人になると、あのうさぎは、見えなくなるのかも知れないと考えたのでした。

 

冷たい夜風に当たりながら思い出した、幼い頃の記憶に、

今の私にも、月のうさぎが見えなくなってしまったことに、

漸く、気が付きました。

 

私は、いつから、

あの、月のうさぎが見えなくなってしまったのだろう。

 

幼い頃とは不思議なもので、

無知であるからこそ、

見えていたものがあったのかも知れませんね。

 

私ね、子供の頃は、月にうさぎが見えていたの

こんな形のうさぎでね、

月から、こっちを見ていたんだよ

 

もしも、あなたにそんな話をしたのなら、

あなたは、どんな言葉を返してくれたのだろう。

 

俺は、こんなふうに見えていたよ

 

きっと、幼い頃のあなたにも、

そこに、私とは違う何かが見えていたのでしょう。

 

今の私に見えるのは、

心が優しくなれるような、ただ、穏やかな光。

 

ねぇ、あなたの場所からは、

どんなふうに月が見えますか。