拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

電車通学

あなたへ

 

実は私、高校生の頃は、電車通学に憧れていました。

 

ほら。よく映画やドラマであるでしょ?

駅のホームや、車内での素敵な人との出会いみたいな。

他校の制服を着た、名前も知らないあの人に、

こっそりと想いを寄せる的な。

 

自転車通学だった私は、あんな高校生活に憧れていたのでした。

 

電車通学はどう?

楽しんでる?

 

あの子が高校生に上がると、電車通学とは、どんな感じなのか、

興味津々で、話を聞いたのでした。

 

お母さんが聞きたいのは、映画みたいなアレでしょ?

正直言って、俺も憧れてた

だから、今の高校に合格した時は、

高校生活の何が楽しみって、電車通学だったんだよね

 

あの子もまた、私が高校生だった頃と同じように、

電車通学に憧れていたと話してくれたのは、

いつのことだったでしょうか。

 

でもね、現実は違うよ

 

そう言って、あの子が話してくれたのは、

思っていたよりも、ずっと疲れることや、

電車に乗る時間が違うのか、または方向が違うのか、

まず、女の子がいないということ。

 

そして、

お父様方に囲まれての電車通学が、

現実であるということを話して聞かせてくれました。

 

期待に胸を膨らませた電車通学でしたが、

期待は見事に打ち砕かれ、

3年間もこんな生活が続くのかと、

期待から、大きなため息に変わるのには、

あまり時間は掛からなかったようです。

 

自由登校が始まり、

あの子曰く、ただ疲れるだけの電車通学も、

今月末にある登校日が、最後の電車通学になりました。

 

この3年間、

電車通学中の出来事を、色々と話して聞かせてくれていたあの子ですが、

電車通学の大変さを知ったあの子は、いつの頃からか、

電車で通勤するお父様方へ、敬意を払うようになりました。

 

俺は、3年間で終わりだけれど、

これから先も、きっと何年も、

電車で通勤するであろうお父様方を、心から尊敬するよ と。

 

憧れていた電車通学ですが、

あの子はもう、懲り懲りだそうです。

 

電車通学の中での、

映画のような展開の話を期待して待っていた私ですが、

あの子の話を聞きながら、現実の厳しさを教えられ、

私は、自転車通学で良かったのかも知れないと、

今更ながら、思えるようになりました。

 

時には愚痴を言いながらも、

あの子は、3年間、電車通学を頑張りましたよ。