あなたへ
あれ?俺、言わなかったっけ?
ある日、唐突に、あの子が話してくれたのは、
高校生活の中での、お弁当の時間のこと。
私が作ったお弁当を、
いつも周りの友達が、褒めてくれていたよ という話を聞かせてくれました。
料理が苦手な私にとって、
毎日のお弁当作りは、苦労をすることも多くありました。
私なりに、料理の進化を遂げた3年間のお弁当作りの日々でもありましたが、
私が作ったお弁当が、
人から褒めて貰えていただなんて、思ってもいませんでした。
大変だったけれど、頑張って良かった
感動を胸に、3年間のお弁当作りの日々を、改めて振り返ったのは、
あの子の高校卒業を、間近に控えた頃のことでした。
先日から、あの子の進学先でも、少しすつ、
登校日が設けられるようになりました。
今のところ、
オンライン授業と、教室での授業が、半分ずつ、
と言ったところでしょうか。
お弁当、よろしくね
間も無く、初登校日を迎えようとしていた頃のあの子の言葉に、
私は、ハッとしました。
なんということでしょうか。
あの子の進学先が決まり、
高校3年間のお弁当作りを終え、
学校を辞めたいとまで言っていたあの子が、無事に高校卒業を迎え、
漸く踏み出す、あの子の新たな道への第一歩を喜ぶばかりで、
私は、新たな進学先でのお昼ご飯のことなど、
何も考えていませんでしたよ。
高校3年間のお弁当作りは、
大変だったけれど、楽しかったな などと、
悠長に浸っている場合ではありませんでした。
私としたことが、とんだ失態ではありましたが、
お弁当作りの日々が、今、ここに戻ってまいりました。
ですが、私はもう、
3年前の、お弁当作りに四苦八苦してしまう私ではありません。
3年という月日を掛けて、お弁当作りを学んだ私なのです。
お弁当ですね?はい!喜んで! ですよ。
今、ここに、お弁当作りの日々が、新たに始まりましたが、
きっとね、そんなに長くは続かないような気がします。
新しい生活に慣れていけば、
明日は、友達とランチに行くから、お弁当はいらないよって、
そんなふうに、あの子の楽しそうな声が聞こえて来ると思うのです。
そうして、きっと、
私が作ったお弁当を食べてくれる機会も、
いつの間にか、なくなっているのでしょう。
成長と共に、あの子に手を掛けてあげられる機会も、
随分と少なくなって来ました。
今、ここにある、あの子へのお弁当作りの時間は、
きっと、神様がくれた私へのプレゼント。
今は、この、掛け替えのない時間を、大切にしたいと思います。