拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

招待状

招待状

 

明日、あなたのお誕生会を開きます。

あなたの好きなお食事を用意して待っています。

是非、来てくださいね。

 


日時:2019年2月5日(火)20時より

 

場所:家族の部屋にて

 


軽装でお越しください。

 

                    あなたの妻、あの子より

 

 

 

節分

あなたへ

 

今日は、節分の日です。

毎年、この日には、家族3人で、豆まきをしましたね。

 

あなたは、覚えていますか。

 

鬼のお面を付けて、

あの子に襲いかかろうとするあなたの姿に喜んで、

大騒ぎをしながら、豆を投げていたあの子だったけれど、

外に逃げたあなたを追いかけながら、

突然、泣き出してしまった、幼い頃のあの子のことを。

 

あれは、

あの子がまだ、3歳くらいの頃だったでしょうか。

 

あの日、家の中で、大暴れをした緑色の鬼さん。

 

あの子に豆まきで退治され、

外に出た緑色の鬼さんを追いかけて、あの子も靴を履いたけれど、

急に、緑色の鬼さんに豆を投げることが可愛そうに感じたあの子は、

外へ出ると、

豆を投げることをやめて、泣き出してしまったのでした。

 

だって、緑色の鬼さんは、大好きなパパだから。

 

鬼のお面を外したあなたが、

泣いている小さなあの子をギュッと抱き締めたあの日のこと、

今でもよく覚えています。

 

いつでも、私たちが予想もしないやり方で、

成長を見せてくれたあの子。

 

なんだか、胸がいっぱいになりながら、

年の数だけ、豆を食べたあの年が、

節分の日の思い出の中でも一番、印象に残っています。

 

毎年、

鬼は外、福は内と、大きな声で、豆まきをしていた我が家ですが、

あなたを見送り、あの子の成長と共に、

もう、大きな声で、豆まきをすることはなくなりました。

 

豪勢に蒔いていた豆も、今は、ひと粒ずつ。

 

今年も、とても小さな声で、豆まきを終えると、

年の数だけ豆を食べました。

 

年を取ったら、豆を食べるのが大変だね なんて、

あの頃、あなたと2人で笑いましたっけ。

 

年々、年の数だけ豆を食べるのが大変になってきた私ですが、

今年も無事に、ひと粒、増やすことが出来ましたよ。

 

あなたのところにも、あなたの年の数だけ、豆をお供えしました。

 

そちら側のあなたも、

元気に過ごすことが出来ますように。

 

 

 

100%あなたに会える場所

あなたへ

 

ホームセンターへ出掛けると、

無意識に工具売り場を覗き、

つい、あなたを探してしまうところは、

あの頃のまま、私は、何も変わっていません。

 

何故ならそこは、

100%の確率で、あなたを見つけることが出来る場所だったから。

 

工具が好きだったあなたにとって、

ホームセンターは、大好きな場所のひとつでしたね。

 

ホームセンターであなたとはぐれたら、

工具売り場へ行けばあなたがいる

 

そう気が付いたのは、

家から離れた大型のホームセンターへ出掛けた日のことてした。

 

あの日、買い物をしている間に、あなたとはぐれてしまった私。

 

闇雲に探しても到底見つかりそうにない程の広過ぎる店内を見渡しながら、

あなたなら、何を見に行くだろうかと、考えながら、

真っ先に、工具売り場へと向かったのでした。

 

携帯電話。

そんな便利なものが手元にありながら、

あなたに電話を掛けずに、そこへ向かった私は、

今思えば、無意識の中に、小さな自信があったからなのかも知れません。

 

工具売り場へ到着すると、

楽しそうに工具を手に取り眺めるあなたを見つけました。

 

豊富に揃った工具売り場のある、あの大型のホームセンターは、きっと、

あなたにとって、宝物が詰まった場所だったに違いありません。

だって、あの日のあなたの横顔は、

なんだか、少年みたいにキラキラしていたもの。

 

あの日は、あなたが知らないあなたを見つけた日。

 

あなたとはぐれたら、

工具売り場に探しに行けば、絶対に見つかるんだよ

 

あの日、こんなことを言った私に、

 

そんなことないよ

 

なんて、あなたは、笑っていたけれど、

あれからの私は、密かにその確率を立証すべく、

ホームセンターで、あなたとはぐれる度に、

真っ先に、工具売り場へと向かったのでした。

 

そこに行けば、あなたに会える確率。

それは、100%でした。

 

あなたを見送り、

ホームセンターへ行く機会は、随分と減りましたが、

ホームセンターへ出掛けると、無意識に工具売り場を覗いては、

あの頃みたいに、

私には、どれも同じに見えてしまう工具を真剣に、

そして、楽しそうに眺めるあなたを探してしまうのです。

 

そこに知らない顔の方が、工具を選ぶ姿を確認し、ようやく諦めると、

胸の奥の小さな痛みに気付かない振りをして、用事を済ませ、

そそくさと店を出て、小さなため息をひとつ。

 

それでもきっと、

私はこれからも、ホームセンターへ行く度に、

無意識に工具売り場を覗いてしまうのでしょう。

 

100%の確率で、あなたに会える場所。

 

そこだけは、

あの頃のまま、

時間が止まっているような気がして。

 

 

OFUSEで応援を送る