拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

3年目

あなたへ

 

そちら側のあなたに、

始めて手紙を書いた日のことを、思い出していました。

 

あの頃の私は、あの夏にあなたを置いたまま、

前に進まなければならなかった自分が嫌で、

残酷に過ぎていく時間が、恐ろしくさえも感じていました。

 

あの夏が遠くなればなる程、

あなたから遠く離れていってしまうような、そんな気がしては、

泣きながら、あの夏のあなたに、

必死で手を伸ばしていたような気がします。

 

ただ、あなたの側にいたい と。

 

あなたに手紙を書き始めてから、今日で3年目を迎えました。

 

この3年間、ゆっくりと、あなたへの手紙を書きながら、

気が付けば、なんだか、とても、

あなたを側に感じるようになった気がします。

 

あなたは、今、どんなところにいるのだろう。

 

今日のあなたは、どんなことが一番、楽しかっただろうか。

 

そんなことを考えてみては、

なんだか、とても、

楽しい気持ちで文字を綴る時間も、

あなたに逢いたくて、

泣きながら文字を綴る時間も、

あなたを想いながら、手紙を書く時間は、

私にとって、掛け替えのない時間。

 

それは、

今日は、こんなことがあったよ

こんなことを考えたよ って、

側にいるあなたに話し掛けていたあの頃の時間と、

とても似ているような気がします。

 

もう、あなたの声は、聞こえないけれど、

きっとね、この手紙の先には、あなたがいて、

いつでも、あなたからの返信は風に乗って、

私のところまで届いているような、そんな気がします。

 

だって、あなたなら、どんなふうに返事をしてくれるのか、

私には、分かる気がするもの。

 

あなたに手紙を書いていて、本当に良かったなって、

そんなことを感じる、3年目です。

 

あなたは今、

どんなところで、この手紙を読んでいますか。

 

あなたの今日は、どんな1日でしたか。

 

きっと何処かで、

この手紙を読んでくれているあなたへ。

 

愛を込めて。

 

 

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雨の世界

あなたへ

 

私は、いつから、

雨の日の外出が、嫌いになったのだろう。

幼い頃の私は、

雨の日の、楽しい過ごし方を知っていたはずなのに。

 

梅雨入りしたこちらでは、今日も雨が降りました。

 

朝から用事があった私は、出来るだけ、早く帰ろうと、

そんな気持ちで、外出先へと急いだのでした。

 

厚い雲、

止みそうにない雨。

 

いつもの私なら、

思わず、ため息を吐いてしまいそうな天気のはずなのに、

外出先からの帰り道、

ふと、寄り道をしてみたくなったのは、

何か楽しいことが見つかるかも知れないと、

何故だか、急に、そんな気がしたからでした。

 

寄り道先に選んだのは、

いつか、あなたとあの子と3人で遊んだ、菜の花が咲く公園。

 

私のお気に入りのあの場所は、

この辺りでも、比較的空いている公園ですが、

雨降りの今日は、私以外、誰も歩いてる人はおらず、

しんと静まり返っていました。

 

葉っぱに当たる静かな雨音

遠くから聞こえる、ウシガエルの鳴き声

時々聞こえる電車の音

 

屋根のついたベンチに座り、

ただ、それらの音を楽しみながら、空を眺めていると、

どこか別な世界へと迷い込んでしまったかのような、

ちょっと、不思議な気持ちになりました。

 

それは、遥か昔の私が楽しんでいた、

雨の日にだけ感じることが出来る、ワクワクとした気持ち。

 

雨の世界は、とても楽しい

 

幼い頃に楽しんでいた、雨の世界を思い出すことが出来た私は、

これからの雨の日を、

楽しみながら過ごせるような気がしました。

 

雨の日にだけ、

特別な世界へと連れて行ってくれるあの場所で、

あなたと一緒に過ごすことが出来たのなら、

私は、どんなあなたを見つけることが出来たのでしょうか。

 

特別な世界で見つける、私が知らないあなたは、

きっと、いつもよりも、もっと素敵で、

私はきっと、雨の日に、

また、あなたに恋をしたのでしょう。

 

 

 

登山

あなたへ

 

登山家の方が撮った写真を目にした私は、

 

やはり、高いところから見る空と、

私がいつも見ている空は、違うんだな

 

なんて、まじまじと、写真を見つめながら、

ふと、私が最後に、山に登ったのは、

いつだっただろうかと考えていました。

 

小学生、中学生と、山に登った記憶を辿れば、

最後に待っていてくれたのは、あなたと過ごした記憶。

 

あれは、あの子が小学校に上がり、

最初のお正月のことでしたね。

 

年末から、あなたの実家に泊まっていた私たち。

 

大晦日の夜の談笑から、

皆で近くの山に登って、初日の出を見よう

そんな話になったのでした。

 

急に、登山なんて、絶対無理だよ なんて、怖気付いた私ですが、

 

登山じゃないから、大丈夫だよ

ただの散歩コース

 

そんなあなたの言葉に安心し、

年明けの薄暗い時間から、山へと出掛けたのでした。

 

皆で談笑しながら歩いた、なだらかな道。

 

きっとこのまま、

いつの間にか、頂上へと辿り着いているのだろう。

だって、散歩コースなのだから。

 

そんなことを考えていた私の気持ちが折れることになったのは、

歩き始めてから、どれくらいが経った頃だったでしょうか。

 

え?これ本当に、散歩コースなの?

 

ひとり、音を上げた私に、笑うあなた。

 

あなたの言う散歩コースと、私が想像する散歩コース。

随分と、掛け離れた険しい山道に、

私は何度、同じ言葉を発したでしょうか。

 

これ、登山だよね? って。

 

傾斜が急な上り坂では、あなたに手を引かれ、

大きな岩場を登る時には、後ろから押され、

漸く、頂上へ辿り着く頃に、丁度、日が昇り始めたのでした。

 

あの時に見た初日の出は、

折れ掛かっていた私の心を癒してくれるかのように思えました。

 

 

そうして、初めて山から見た日の出に、

あの子と一緒に大興奮で、

その美しい景色を、写真に収めたのでした。

 

今年も、いい年にしようね

 

皆でそんな話をする頃には、すっかり元気を取り戻し、

頂上を後にしたのでした。

 

自然に囲まれた場所で育ったあなたと、そうでない私。

 

その感覚の違いは、

今、思えば、笑ってしまう楽しい思い出です。

 

偶然目にした1枚の写真から思い出した、あの頃の記憶。

山から見た景色は、とても綺麗でしたね。

辛かったはずなのに、なんだか楽しかった。

 

山へ登った記憶と、

これまでの自分の人生を、無意識に重ね合わせながら、

ふと、山へ登ることと人生は、

なんだかとても、似ているような気がしました。