拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

曾孫を抱く日

あなたへ

 

あの子は時々、

自分が思い描く将来について、語って聞かせてくれます。

 

どんな道へ進み、将来どんな人になりたいのか。

それから、結婚や子供のこと。

 

たくさんの話を聞かせてくれるあの子ですが、

先日、突拍子もないことを言い出しました。

 

もしもさ、

俺が早くに結婚して、子供が生まれてさ、

その子も早くに結婚して、子供が生まれたとしたら、

その頃、お母さんが生きてる可能性、あるよね?

その時は、曽孫にも会えるねって。

 

早ければ、間に合うかもね

 

そんな私の言葉に、

 

長生きしてね

曾孫にも会ってほしいよ

 

あの子は、そんなふうに言ってくれました。

 

曾孫だなんて、

随分と唐突なあの子の言葉に笑いましたが、

思わず、何十年か先の未来を、想像してしまいました。

 

曾孫を抱く日。

 

もしも本当にそんな日が来たなら、

どんなに素敵でしょうか。

 

私は、どんな気持ちで、曾孫を抱くのだろう。

 

もしも、その時まで、この生があるのなら、

その頃の私は、きっと、

今の私には見えない、素敵なものを、

たくさん、みつけることが出来ているのでしょう。

 

何十年も先の未来の私は、

何を学び、どんなことを知っているのか。

 

今の私には、まだ、全く想像もつきませんが、

ただ、ひとつ、

皺々のおばあちゃんになっても、

空を見上げ、あなたを想う私だけは、

きっと、今と何も変わらないのでしょう。

  

皺々になったこの手を、空へと伸ばし、

 

ねぇ、あなた

私、曾孫を抱くことができたのよ

もう、思い残すことなんて、なにもない

 

もうすぐ、あなたに逢えるかしら

 

そんなふうに呟いたのなら、

あなたは、なんて答えてくれるのでしょうか。

 

 

 

コトバ -5年-

彼を見送ってから

5年と1ヶ月ほどが経った

 

彼を想いながら生きてきた この5年間という月日を振り返りながら

私は初めて

長かったと感じた

 

彼を見送ってからの月日に対して

こんなふうに

何かを感じるのは初めてのことだ

 

相変わらず

この月日を

もう と表現すべきなのか

まだ と表現すべきなのか

答えは見つからないけれど

 

ただ長かったと

私の中で

この月日を表す言葉をみつけた

 

彼を見送ってから2年が過ぎた頃の私は

 

もう2年も経つんだね

早いね

 

そんな言葉に敏感に反応し

その正体が何なのかさえ分からぬままに

腹の中で苛ついていた

 

今の私は

 

もう5年も経つの?

早いね

 

そんな言葉に

ほんの少しだけ

あの頃と同じ感情を残しながらも

 

そうですね

月日が経つのは本当に早いもので と

 

感情の籠らない笑顔で

受け答えができるようになった

 

もう

まだ

そんな言葉をつけることが出来ないただの数年間

 

こんな時間の経ち方を知らないのは

幸せな証拠なんだと思う

 

私だって彼を見送るまで知らなかった

 

だから

理解してもらおうなどとは少しも思わない

幸せなのは素晴らしいことだ

 

出来ればそのまま

私の周りにいてくれる人が

この先ずっと

こんな苦しみを知らないでいてくれたらって思うよ

 

でも

 

ただ見えているものが違うのだと理解しながらも

どんな感情にも該当しない

得体の知れない感情が沸々と湧き上がるのが嫌で

いつの頃からか

彼が亡くなってからの月日に対して

もう

まだ

と表現する人との間に

こっそりと鉛筆で線を引くようになった

 

これは私なりの 自分を守る術なのだろうか

 

割と結構な数の線が引かれてしまったのは

皆が幸せな証拠だと

 

ただぼんやりと

線のこちら側から眺めている私のことなど

誰も知らないだろう

 

今の私が

この5年間の月日に対して

長かったと感じるように

 

いつか

 

もう

まだ

と感じる日は来るのだろうか

 

今の私にはきっと

まだまだ見えていないものがたくさんある

 

数年後の私には何が見えるのだろう

 

目の前に引いた鉛筆の線を見つめながら

時々考える

 

私は

本当はこんな線など消してしまいたいのだろうか と

 

そんなことは出来るはずがないと嘲笑しながらも

いつの日か

自らが消しゴムを使って

全ての線を消す日を想像してみた

 

 

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夏と秋の間

あなたへ

 

今日は、夕方から少しの間だけ、気分転換にと、

散歩へ出掛けました。

 

ゆっくりと、散歩をしながら、空を見上げると、

大きなハート型の雲をみつけました。

 

あなたと出会う、ずっと前から、

空を見上げるのが好きだった私ですが、

思えば、時々、

ハート型の雲をみつけるようになったのは、

あなたを見送ってからのことでした。

 

これは、あなたからの、

愛してるのメッセージと受け取ってもいいでしょうか。

 

勝手に、自分のいいように、解釈しながら、

暫くの間、空を眺めていたら、

近頃、思い悩んでいた色々なことが、

急に、大したこともないように思えてしまいました。

 

まぁいいか

大丈夫

 

そう思うことが出来た私は、

その程度のことに、思い悩んでいたのでしょうか。

 

こうして、ゆっくりと散歩をしていると、

季節の移り変わりを肌で、耳で、感じることが出来ます。

 

散歩に疲れてベンチに座り、

心地の良い風に吹かれながら、耳を澄ますと、

夏と秋の音が聞こえました。

 

今は丁度、夏と秋の間。

 

いつもの私なら、

季節の移ろうこの時期に、寂しさを感じる私ですが、

今日の私は、なんだかとても、幸せな気持ちがします。