拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

言葉のない3秒間

あなたへ

 

どうして、こうも忙しいのかと、

なんだか、ため息が出てしまう今日この頃。

 

近頃の私の職場は、とても忙しく、

夕方には、疲れ果てて、

抜け殻のようになって帰路につくことも、しばしばでした。

 

会社からの帰り道、スーパーの前で、

出入り口を塞がないよう、手前に停車した状態で、信号待ちをしていると、

スーパーから、1台の右折車両が出てきました。

 

特に気にも留めずに、ボーッと、信号だけを見つめていると、

視界の端に入ったのは、

右折車両の全開に開いた窓から、

身を乗り出さんばかりに、こちらへ右手を上げる運転手の姿。

 

疲れた顔のまま、ゆっくりとそちらへ視線を送ると、

日に焼けた年配の男性が、運転席から右手を上げたまま、

こちらに、満面の笑顔を向けてくれました。

 

それは、出入り口の手前で停車していた私に、

お礼の挨拶だったのでしょう。

 

その満面の笑顔に、

思わず、こちらも笑顔で会釈を返しながら、

なんだかとても、ほのぼのとした気持ちで、視線を前へと戻した時には、

先程までの疲れなど、どこかへ吹き飛び、

気持ちが、とても軽くなっていたのでした。

 

これは、たった3秒間程の、

知らない方との、言葉のないやりとり。

 

きっと、もう二度と会うことのない、あの男性は、

疲れた私を、あの一瞬で癒したことなど、気付くことはないのでしょう。

 

知らない誰かから、こんなふうに、元気をもらうこともあるのだと、

とても衝撃を受けた私の中には、

あの3秒間が、

1日の中で、最も印象に残る時間として、刻み込まれました。

 

近頃の私は、忙しさのあまり、

眉間に皺を寄せたままで、1日の大半を過ごしていたのかも知れません。

 

叫びたくなるような衝動を抑えながら、仕事と向き合っていた私に、

何か大切なものを残してくれた、言葉のない3秒間は、

きっと、この先、疲れ果てた時に、

そっと思い出す時間となるのでしょう。

 

日常の中でみつけた素敵な出来事。

 

もしも、あなたに話すことが出来たのなら、

あなたは、なんて答えてくれるのだろう。

 

あなたにも伝えたい素敵なものを、またひとつ、みつけたよ。