拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

3つ目の香り

あなたへ

 

自宅で、初めて、

あなたにお線香をあげた日のことを、思い出していました。

 

あれは、告別式を終え、

その姿を変えて、漸く、自宅へと戻って来た日。

 

自宅へ帰って来たあなたに、初めて、お線香をあげて、

手を合わせながら、泣いたのでした。

 

私は、どうして今、

あなたにお線香をあげているのだろうって。

 

そこにあなたの遺影や位牌があることが、酷く不自然で、

あなたに手を合わせることも、何もかもが不自然に思えて、

気が付けば、声を上げて、泣いていたのでした。

 

その不自然さを拭い去ることが出来ずに、

私は、あなたに手を合わせながら、何度、泣いたでしょうか。

 

あの頃から、私は、

あの、普通のお線香の香りが苦手になりました。

 

とても、悲しい香りがするの。

 

贈り物で届いたお線香を使い切った頃から、

私の基準とする普通の香りのお線香は、使わなくなった我が家。

 

主に、ストロベリーの香りのお線香が中心となったは、

いつからだったでしょうか。

 

例えば、

蝋燭

お線香

 

悲しい気持ちのするものについて、多くのことを知ろうとしなかった私が、

たくさんの種類のお線香があることを知ったのは、

いい香りのお線香も色々とあるんだよって、

先輩からの、そんな言葉からでした。

 

先日買った、あなたへの3種類のお線香のプレゼント。

 

この夏は、スイカの香りを楽しみましたね。

 

秋を感じさせる夜の風に当たりながら、ふと、

スイカの香りは、そろそろ飽きたな

なんて笑う、あなたの顔が思い浮かびました。

 

そろそろ、スイカの季節も終わりかな。

 

お線香の香りを変えようと思い立ち、

手に取った新しい箱は、ミルクの香り。

 

火をつけて広がった、ほんのりとした甘い香りに、

暫くの間、あなたの側で、香りを楽しみました。

 

甘い香りは、

なんだか、ホッとした気持ちにさせられます。

 

あなたも、この香り、好きでしょうか。

 

気が付けば、今の私は、こんなふうに、

お線香をあげながら、

香りを楽しむことが出来るようになりました。

 

手を合わせることへの不自然さが消え、

いつの頃からか、

手を合わせる時間は、あなたとのお喋りの時間となっていたことに、

はたと気が付いた私。

 

これが、

生きて、時間を過ごすことなのだと、

認めざるを得ない気持ちに、胸の奥が痛むけれど、

きっと、こんなふうに、ひとつひとつ、ゆっくりと認めて、

歩むしかないのでしょう。

 

今日の私が、感傷的な気持ちで、あなたと向き合うのは、

あなたと出会った季節から、次の季節への巡りを、

肌で感じたせいでしょうか。