拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

立冬の奇跡

あなたへ

 

あなたが知らない、

あの子の中のジョニーの存在。

 

そんなに大したこともないんでしょ?

 

なんて、思っているでしょうか。

 

とんでもありません。

 

毎朝、毎朝、起こしても、起きないあの子を起こすのが、

どんなに大変なことなのか、

いつでも目覚めが良かったあの頃のあの子しか知らないあなたには、

きっと、想像もつかないかも知れません。

 

眠りを妨げる私に向ける、あの鋭い眼差し。

唸るような声と、普段は使わない言葉。

 

そして、

武道を長く習っているあの子の手の振り上げ方など、

半端なものではありません。

 

うるせーな!

なんて、手を振り上げられようものなら、

こちらも、本気で逃げなければ、

ぶっ飛ばされそうな勢いなのです。

 

寝不足の時に現れていたジョニーですが、

日に日に登場頻度が増し、

いつの頃からか、

ほぼ毎朝、お会いするのが当たり前となっていきました。

 

そんな寝起きの悪いあの子ですが、

今朝は、奇跡が起こったのです。

 

あの子を起こす20分前、

 

おはよう

 

あの子自らが起きてきたではありませんか。

 

驚きました。

 

あの子の中に隠れた、恐ろしい顔をしたジョニーに会わずに、

学校へ行くあの子を送り出すことが出来たのは、いつ振りでしょうか。

 

非常に爽やかな朝に、

今日の私は、踊り出したい気持ちで、

軽やかに、会社へと出勤することが出来たのでした。

 

今日は、立冬です。

 

今日のこの素晴らしい出来事を、

立冬の奇跡と呼ぶことにしましょう。

 

さて、

先日、あの子と、

ジョニーについての話をしながら、思い出したことがあります。

 

認めたくはありませんが、

あの子の寝起きの悪さは、どうやら、私譲りのようなのです。

 

今でこそ、早起きを心がけるようになった私ですが、

思い返してみれば、あなたと出会うずっと前の私は、

とても寝起きが悪いタイプでした。

 

そんな私が、

いつから変わっていったのか、

もう、思い出すことも出来ませんが、

遠い過去、

確かに寝起きが悪かった自分のことを、ふと、思い出したのでした。

 

あの子の中のジョニーとの戦いの日々は、

あの頃の親の苦労を知れ

ということなのでしょうか。

 

いつかあの子も、

我が子を起こすのに苦労する日が来るのかも知れませんね。

 

朝、起きなくてさぁ なんて、

我が子の寝起きの悪さに困り顔のあの子の姿が、目に浮かぶようです。

 

今日のこの、立冬の奇跡の出来事をしっかりと胸に焼き付け、

いつかあの子が同じことで困ってしまったら、

教えてあげたいと思います。

 

いつまでも同じじゃないから、大丈夫だよと。

 

 

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気持ちを伝える大切さ

あなたへ

 

あなたを見送ってからの私が、一番変わったところは、

言葉にして、気持ちを伝えるようになったことです。

 

思い返してみれば、あの頃の私は、

言葉にしなくても、気持ちは伝わるものだと思っていました。

 

家族だから

 

いつの間にか、そんなふうに、

甘えていたのかも知れません。

 

喧嘩をすれば、思ってもいないことを言ってしまうくせに、

あなたのことが、どんなに大切なのか、

本当に伝えるべき言葉を後回しに、

それでもきっと、この想いの全ては、

あなたに届いているのだろうって、

心の何処かで、そんなふうに考えていたように思います。

 

人は、永遠には生きられません。

 

それは、幼い頃から、知っていたはずなのに、

 

あなたは、ずっと、側にいてくれるのだと、

そう勘違いをして生きていたのだと思います。

 

もっと、素直になれば良かった

もっと、愛を伝えれば良かった

 

きっと、あなたが考えている以上に、

私は、あなたを愛しているんだよ

 

私は、あなたを見送ってから、私は幾つくらい、

後悔したことがあっただろう。

 

あの頃のことを思い返しては、涙が溢れます。

 

いつか伝えればいい

それでは、間に合わなかったの。

 

特別なんて、何処にもない。

 

あなたを見送り、

いつでも、気持ちを伝えることが出来るわけではないと知り、

言葉で伝えることの大切さを学びました。

 

きっと、言葉にして伝えなければ、

伝わらないことだって、たくさんあるんだね。

 

たくさんの想いを伝えなければならなかったあなたを失い、

私は漸く、大切なことに気が付いたのでした。

 

どんなに泣いても、

此処に生きるあなたの顔を見て、

その頬に触れて、

想いを伝えることは、もう、出来ません。

 

だから、せめて、

今、側にいる大切な人たちには、ちゃんと想いを伝えたい。

 

いつの頃からか、私は、

そんなふうに、変わっていきました。

 

ごめんね

 

あの頃、素直になれなくて、ごめんね。

想いを伝えることが出来なくて、ごめんね。

 

私は、あなたをとても愛しているよ。

 

 

 

あの子への最初のプレゼント

あなたへ

 

先日、あの子と、名前の話をしました。

あの子の話に出てくる友達の呼び名は、その殆どが苗字ですが、

下の名前は、こんな名前なんだよと、

色々な子たちの、下の名前を教えてくれました。

 

どの子も、とても素敵な名前ばかりで、

その名を聞く度に、

格好いいね

男らしいねと、称賛しながら、相槌を打ったのでした。

 

色々な子たちの名前の話をしながら、

あの子の名前を褒められるという話を聞かせてくれました。

 

高校生になってから、

俺の名前、結構、褒められるんだよね

高校で出来た友達とか、

アルバイト先のお客さんとかさ

 

そんな話の中の、アルバイト先での出来事。

 

常連客が多いそのお店で、

当時、アルバイトを始めたばかりだったあの子は、

お客さんから、よく声を掛けて頂いていたそうです。

 

新しい子だね

頑張ってね

 

いくつもの激励の言葉を掛けられる中、

あの子の名札を見たお客さんから、

 

いい名前だね

お父さんとお母さんに、感謝するんだよ

 

そんなふうに、

声を掛けて頂いたと言います。

 

俺、あの時、嬉しかったんだよね

 

なんだか、とても、胸が温かくなるあの子の話に、

あの子が、お腹に出来た日のことを、思い出していました。

 

もしも、男の子だったらさ なんて、

早速、名前の提案をするあなたが、

なんだか、可笑しくて、嬉しかったあの日の、大切な思い出。

 

あの頃の私たちは、

こんなに嬉しい話を聞けるだなんて、思ってもいませんでしたね。

 

あの子の話に、

あなたは、どんな顔で喜んだのだろう。

 

名前は、子供への最初のプレゼント。

 

あの子は、

私たちからのプレゼントを、

今も変わらず、とても気に入ってくれていますよ。