拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

6年前のあなた

あなたへ

 

今朝、通勤途中に、正装をしたご夫婦が、歩く姿を見かけました。

今日は、小学校の卒業式だったようです。

 

今日のこちらでは、

卒業式によく似合う青空が広がりました。

 

天気が良くて、良かったですね

そんな想いで、

小学校へ向かうご夫婦の姿を眺めながら、

あの子の小学校卒業式の日を思い出していました。

 

6年前の私たちも、正装をして、

あの子が通った小学校へと、一緒に歩きましたね。

 

あの時、思い出していたのは、

小学校の入学式の日のこと。

あの日は、生憎の雨で、傘を差して、3人で歩いたねって。

 

まだ幼かったあの頃から、

小学校で過ごした6年間を思い返しながら、

学校までの道のりを歩いたのでした。

 

そうそう。

あの日の私は、きっとたくさん泣いてしまうのだろうって、

ポケットにハンカチとティッシュを忍ばせて、

泣く準備万端で出掛けたのに、

あまりにも身構えたせいか、

涙を流すことがないまま、

あの子の卒業式を見守ったのでした。

 

大きくなったね

 

喜びを噛みしめながら、私が涙を流したのは、

卒業式を終え、夜になり、

あの子が眠ってからのことでした。

 

あの日のことを、ゆっくりと思い出せば、

いつもとは違うあなたの顔が蘇りました。

 

視力がよく、普段は眼鏡を掛けることがなかったあなたでしたが、

あの日のあなたは、何故か、

その生涯で、ひとつだけ作った眼鏡を掛けて、

卒業式へと出掛けましたね。

 

あの日のあなたが、どうして眼鏡を掛けたのか、

今でも、その理由は分からないままですが、

思えば、あの日が、

眼鏡を掛けたあなたの姿を最後に見た日でした。

 

格好いい!

 

あなたを見上げたあの子が、その眼鏡姿を褒めたこと。

あなたは、覚えていますか。

あの時のあなたは、とても嬉しそうに、笑っていましたっけ。

 

6年前の私の隣には、当たり前に、あなたがいてくれました。

 

あれから、半年も経たないうちに、

あなたは、息を引き取り、

もう、あなたの隣を歩くことは出来ないけれど、

卒業式へと出掛けるご夫婦を眺めながら、

6年前の、あなたの隣を歩いた記憶も、

あなたと一緒に見た卒業式の風景も、

あなたの眼鏡姿も、鮮明に思い出しました。

 

眼鏡を掛けた、あの日のちょっと知的な雰囲気のあなたの姿に、

こっそりと、ドキッとしてしまったこと。

あなたは、知っていましたか。

 

スーツ姿にあの眼鏡は、格好良すぎて、反則でしたよ。

 

卒業式によく似合う青空の下、

またひとつ、あの頃の幸せのカケラを拾い集めました。

 

 

 

あなたと過ごした週末

あなたへ

 

あぁ、そうだった。

この週末は、あなたが帰って来てくれているんだった。

 

こんな幸せな気持ちから始まる夢を見ました。

 

我が家の家族の部屋。

あなたとあの子と、家族3人で、ゆっくりと寛ぎながら、

テレビを観たり、のんびりと休日過ごす夢でした。

 

お盆の帰省とは違って、側にいる気がするではなく、

はっきりと見えるあなたの姿にも、

触れることが出来るのも、とても幸せだなって、

夢の中の私は、

その体温を感じながら、ウトウトとしたのでした。

 

この週末は、少し、体調を崩してしまった私。

こんな時は、眠ることが一番だと、家事もそこそこに、

ゆっくりとした週末を過ごしました。

 

何故だか、私が体調を崩すと、夢に現れては、側にいてくれるあなた。

この週末は、ずっと、私の側にいてくれたのでしょうか。

 

あの夢から覚めた私は、

少しだけ、あなたの姿を探してしまいました。

 

目が覚めてしまった私には、

もう、あなたの姿は見えなかったけれど、

きっと、側にいてくれてありがとう。

 

また、今日から、

新しい週が始まりましたが、

この週末、きっとあなたが、側にいてくれたお陰で、

今日からまた、元気に仕事へ行くことが出来ましたよ。

 

あなたのお陰ですね。

ありがとう。

 

 

 

虹色の奇跡

あなたへ

 

今月の11日に、東日本大震災から9年を迎えました。

たくさんの悲しいことがあったあの出来事は、

決して忘れることが出来ませんね。

 

丁度、9年目を迎えたあの日、

地震があった午後2時46分過ぎに、

被災地で、虹が掛かったとのニュースを目にしたのは、先日のことでした。

 

空に掛かった綺麗な虹の映像に、

私は、そちら側と、こちら側の深い繋がりを感じました。

 

やはり、此処ではない世界は、あるのですね。

誰かの大切な人も、あなたも、

きっと、皆がそこにいるのですね。

 

ないと証明されていないことは、ないことにはならないと、

いつかのあなたが言っていた言葉を思い出します。

 

そう。きっと、そちら側の世界は、

あるとは証明されていないけれど、あるということなのでしょう。

 

見たことのない、そちら側の世界を想像してみます。

 

皆さん、お集まりいただき、ありがとうございます

皆さんも知っての通り、向こう側では、今、

大変な事態が起きているようです

そこで、今年は何か、

大きな催し物を行いたいと思いますが如何でしょうか

 

いいですね

 

賛成です

 

皆が笑顔になれるような、素敵なことをしたいですね

 

それでは、空に大きな虹を掛けるというのどうでしょうか

 

虹ですか

いいですね

 

私も虹がいいと思います

 

それでは、

日本時間の2020年3月11日 午後2時46分を少し過ぎたら、

空に虹を掛けることにしましょう

きっと、こちら側からの贈り物だと、

誰もが気付いてくれるでしょう

 

そちら側では、

9年前のあの日、

この世を去らなければならなかった誰かの大切な人たちが皆、集まって、

こんな会議が開かれていたのかも知れませんね。

 

きっと、

此処に遺した大切な人の笑顔を見るために、

入念に準備を整えて、あの日を迎えたのだと思います。

 

そちら側から、大切な人へ、想いを伝えたい。

私には、そんな彼らの想いが起こした、奇跡の虹色に見えました。

 

あなたを見送り、5回目の、

あなたを想う日のことを思い出しました。

 

あの日、私は、泣き出しそうな気持ちで、空を見上げたはずだったのに、

見上げた空に飛行機雲を見つけて、

ひとりでに笑顔になっていたのでした。

 

あの日の飛行機雲も、

きっと、あなたからの贈り物だったのでしょう。

 

あるとは証明はされていない、あなたがいるそちら側は、

やはり、空で繋がっている。

 

そちら側の彼らが起こしてくれた虹色の奇跡は、

私にそれを教えてくれました。

 

 

www.emiblog8.com