拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

空に描かれた手紙

あなたへ

 

あなたから、あの子へ宛てた手紙を見返していました。

これは、あの子の部屋の大掃除で見つけた、いつかの幸せのカケラ。

 

何度読み返しても、やはり、

いつ、どんな時の手紙であったのか、思い出せないままに、

この文字に込められた、あなたの想いをみつめていました。

 

平仮名が多いのは、きっと、

多くの漢字を知らなかったあの子が読めるように。

 

あなたが早い時間に帰って来ると、とても喜んで、

玄関まで迎えに行っていた、

幼かった頃のあの子の姿が目に浮かびました。

 

私は、あなたからの手紙を貰ったことは一度もなかったけれど、

あの頃の私たちには、それは必要なかったね。

 

だって、私には、

幼かったあの子が眠った後に帰って来たあなたと2人で過ごす時間が、

たくさんあったもの。

 

自分の中に、あなたがいるのだと話してくれたあの子と、

何処か遠い場所にあなたがいると考える私。

 

今、あなたからの手紙が必要なのは、

私の方なのかも知れません。

 

見上げた空に、とても大きなハート型の雲を見つけたのは、

昨年のことでした。

 

あの日のことは、今でも、よく覚えています。

 

散歩に行きたい気持ちはあるけれど、ちょっと疲れていて、

どうしようかな

そんな気持ちでいたのに、体が勝手に、公園に向かっていた。

そんな不思議な日でした。

 

ゆっくりと、公園を散歩しながら、見上げた空に見つけたのは、

とても大きなハート型の雲。

 

その大きさに驚きながら、立ち止まると、

穏やかな風に乗って、ゆっくりと、形を変えていったのでした。

 

それは、なんだか、

私がその雲をみつけるのを確認してから、

形を変えていったようにも見えました。

 

もしも、あの時間に、あの場所で、空を見上げなければ、

あの大きなハート型の雲をみつけることはなかったのでしょう。

 

もしも、あの時間に、別な方向を見ていたら、

全く別の空を眺めながら、

あなたを想う日になっていたのでしょう。

 

今日は、これを見るために来たのかな

 

あの時の私は、何故だか、ふと、

そんなふうに考えたのでした。

 

あれは、昨年の9月。

あなたの月命日の日の出来事でした。

 

あなたの月命日には、泣いてしまうこともあるけれど、

思い悩んでいたことが、急に、大したことではないように思えたり、

新たな発見が出来たりと、時々、不思議なことが起こります。

 

あの頃の私には、悩みがありました。

 

それなのに、あの大きなハート型の雲を見上げながら、

何故だか、

大丈夫だって、そんなふうに思えたのでした。

 

あの日、私が見た、大きなハート型の雲は、

そちら側のあなたからの手紙だったのでしょうか。

 

あの日の写真を眺めながら、

空に大きなハート型を描くあなたの姿が目に浮かびました。

 

これでどうだと言わんばかりの大きなハート型の雲には、きっと、

大丈夫だよって、書いてあったんだね。

 

ねぇ、あなた。

またいつか、あんなふうに、

空からの手紙を、送ってくださいね。

 

 

www.emiblog8.com

 

www.emiblog8.com

 

 

www.emiblog8.com

 

 

 

新しい発見

あなたへ

 

高校卒業を機に、髪を伸ばし始めたあの子は、

近頃、ヘアアイロンを器用に使って、

パーマ風の髪型を楽しんでいます。

 

こんな髪型、どうかな

 

あの子から、突然、パーマヘアの画像を見せられたのは、

数週間ほど前のこと。

 

どうだろう

 

全く想像のつかない仕上がりに、

あの時の私は、思わず、言葉に詰まってしまったのでした。

 

あの子が、ヘアアイロンを使って、

憧れのパーマヘアに挑戦したのは、

夏休みが間も無く終わりを迎える頃のことでした。

 

真剣に鏡を見つめるあの子を覗いてみれば、

どちらかと言うと、男らしい印象だったあの子が、

可愛らしい雰囲気に変身したではありませんか。

新しい発見です。

 

想像以上だったその姿には、とても驚いてしまいました。

 

似合う!

凄くよく似合う!!

 

絶賛する私の言葉に、

 

あぁ、どうしよう

俺、モテちゃうよね

 

なんて、要らぬ心配までしながら、アイロンを動かすあの子は、

なんだかとても楽しそうでした。

 

あの子の短い夏休みは終わりを迎え、

学校への登校が始まりました。

いつもよりも、少しだけ早起きをして、

パーマ風の髪型に整え、学校へ登校しているあの子が、

モテモテになったかどうかは不明ですが、

評判は上々なようですよ。

 

あなたによく似たあの子。

きっと、あなたも、パーマヘアがよく似合ったのでしょう。

 

もしも、あなたが此処にいてくれたのなら、

俺もやりたい

なんて、今頃は、親子で同じ髪型を楽しんだのかも知れませんね。

 

きっとあなたも、

男らしい印象から、可愛らしい雰囲気へと、変身したことでしょう。

 

未開拓の領域へと、足を踏み入れたあなたのその姿に、

私は、きっとまた、こっそりと惚れ直しながら、

鏡の前に仲良く並んだ2人の姿を、

写真に収めていたのかも知れません。

 

年を重ねても、いつも若く見られていたあなたはきっと、

成長したあの子の隣に並べば、

少し歳の離れた兄弟のように見えたのかも知れませんね。

 

似合ってるよ

 

なんてお互いに笑い合う2人を、カメラ越しに見守りながら、

私はまたひとつ、

そこに、幸せのカケラをみつけていたのでしょう。

 

 

 

秋の気配

あなたへ

 

静かな公園を散歩したい

 

長かった梅雨が明け、連日の青空を眺めながら、

お気に入りの公園の景色を思い浮かべていたのは、

8月に入ったばかりの頃の私でした。

 

足の痛みに耐えられず、何処へも行けないままに、

今年の夏は、ベランダに出ては、

空を見上げることが多かったように思います。

 

ベランダの柵に、もたれかかりながら、思い出していたのは、

あなたと過ごした、たくさんの夏の日の思い出。

 

あなたと一緒に見上げた夏空が、とても綺麗だったこと。

 

川で水遊びをした日は、

冷たい水が、とても気持ちが良かったですね。

 

夏の音に混ざって、あの頃の笑い声が聞こえてきそうな気がして、

空を見上げたままに、耳を済ませながら、

今年は、とても静かな夏を過ごしました。

 

夕方の爽やかな風に、

秋の気配を感じたのは、つい先日のことでした。

 

日中の強い日差しには、まだまだ夏を感じますが、

気が付けば、少しずつ、夜が長くなってきました。

 

漸く、普通に歩けるようになった頃には、秋を感じるだなんて、

なんだか笑ってしまいますが、

あの子も私も、

健康に過ごすことが出来たことに、感謝しながら、

この2020年の夏を見送りたいと思います。