拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

認めてはならないこと

あなたへ

 

いや、これは違う

絶対に違う

気のせいだから!

 

こんなふうに自分に言い聞かせるのは、

この人生の中で何度目だろう。

 

こちらでは、随分と暖かくなり、

次の季節の訪れを感じられるようになりました。

 

暖かくて気持ちが良いな

 

ベランダに出て、穏やかな風に身を委ねてみれば、

なんだか、くしゃみが止まらずに、

ほんの少しだけ、頭がボーッとするような、

そして、ティッシュペーパーが手放せないような、

そんな気がしてならないのです。

 

それってさ・・・

こんなあなたの声が聞こえてきそうですが、それ以上、言ってはなりません。

 

だって、折角のこの時期に、

ほんの少しだけ憂鬱な気持ちになってしまうような気がするではありませんか。

 

だから、アレである可能性が極めて高いことは、

決して認めてはならないのです。

 

毎年ではないものの、数年に一度ほどのスパンで、

こうして自分に、絶対に違うのだと、

強く言い聞かせなければならない年がやって来ますが、

今年はどうやら、その年に当たってしまったようです。

 

こうして強く、気のせいだと自分に言い聞かせてみれば、

気のせいであるようにも思えてきますと、こう文字を綴りながらも、

またくしゃみをひとつ。

 

この春の我が家では、ここ数年の中で一番、

ティッシュペーパーの消費量が上がりそうな予感がしてなりません。

 

さて、くしゃみをしながらも、

暖かな風の心地よさには敵わずに、

負けずと外へ出て、柔らかな風を感じながら振り返っていたのは、

この冬の寒さについてでした。

 

この冬の私は、実は、

聞かなかったことにした言葉がありました。

 

「10年に一度の大寒波」

 

これは丁度、こちらで雪が降ったと、

こんな手紙を書いた頃に耳に入ってきた言葉でした。

 

寒さが苦手な私は、

毎年よりも、ほんの少しだけ寒いだけなのだと自分に言い聞かせなければ、

本当に、冬眠してしまいかねません。

だから、その言葉は聞かなかったことにして、

自分なりにこの冬の寒さと向き合おうと、

面白いものを見つけて過ごすことにしてみたのでした。

 

思えば、この冬の始まりの頃には、

寒さのあまり、きっと一度くらいは耳が取れてしまうだろうと、

あなたへのこんな手紙を書きましたが、

私の耳は無事、取れないままに、

この冬を越すことが出来たことも、報告しておこうと思います。

 

厳しい修行のような時期は、漸く過ぎ去り、

次は、暖かで、穏やかな風が吹く季節。

 

今はまだ桜の蕾が膨らむ手前ですが、

間も無くやって来るピンク色の景色がとても楽しみです。

 

 

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卒業式

あなたへ

 

あの子が専門学生として歩んできた、

この3年間を振り返っていました。

 

早く学校に行きたい!

 

こんなあの子の声が聞こえてきたのは、

専門学校への登校が始まった頃のことでした。

 

お母さんのお陰で、今の俺がいるんだよ

 

こんな言葉と共に、最高の笑顔を見せてくれた日は、

あの子の背中を押してあげることが出来て、本当に良かったなって、

こんな気持ちで、あの子の言葉を胸いっぱいに抱いたのでした。

 

何のために勉強をするのかが分からないと、

勉強に対して、あんなに後ろ向きだったあの子が、

懸命に勉強へと向き合うようになり、

深夜まで、或いは、明け方まで、

課題に向き合うあの子へと変わっていったのも、

専門学生になってからのことでした。

 

時には、見守るこちらが心配になってしまうほどに、

勉強へと打ち込んだあの子。

 

寝不足で、げっそりとしたあの子の姿を見た日には、

とても心配になりましたが、

それでも、しっかり前を見据えるあの子の姿に、

大きな成長を見つけたのでした。

 

あの子の課題を手伝うことになったのは、

2年生も間も無く終わりを迎える頃のこと。

 

半徹夜の日々が続く中、

眠さのあまりに、ハイテンションであの子と一緒に笑い合った時間は、

掛け替えのない大切な思い出です。

 

一旦、卒業式を迎え、

研究生としての一歩を踏み出したのは、昨年のあの子。

 

いつの頃からか、一度は県外へ出てみたいと、

こんなふうに夢見るようになったあの子と共に過ごすことが出来るのは、

きっと、この1年が最後なのだと、

あの頃の私は、密かに腹を括ったのでした。

 

これから過ごすあの子との1年間は、

きっと私への最後の贈り物のような時間なのだろうなって。

 

あの子が無事に卒業の日を迎えました。

 

これで、あの子の学校生活の全てが終わりを迎えました。

こちら側の事情から、保護者の参列は出来ませんでしたが、

あの子を会場まで送り届けた時間も、

卒業式での時間を楽しそうに話してくれたあの子の笑顔を見つめた時間も、

掛け替えのない大切な宝物。

 

楽しかった!

 

こんな声から始まったあの子の専門学校での生活は、

その終わりの瞬間までを、

楽しかったの声で埋め尽くされました。

 

今、私の胸の中に集まったのは、

専門学生としてのあの子が歩んだ日々の、

全ての笑顔です。

 

人生最後の学生生活でもある専門学校での日々は、

きっと、あの子の中で、

いつまでも鮮やかな記憶として残っていくのでしょう。

 

それらの大切な記憶はきっと、これからのあの子の支えとなり、

時に、背中を押してくれる記憶ともなってくれるのだと思います。

 

あの子の晴れ姿を、

側で見守ることが出来るのも、これで最後です。

 

卒業おめでとう。

 

こんな私の声を、笑顔で受け取ってくれたあの子の最高の笑顔を、

私は生涯、忘れることはないでしょう。

 

あの子の晴れ姿、

あなたも何処かで見ていてくれたでしょうか。

 

あの子は立派に、専門学校を卒業しましたよ。

 

大きくなりましたね。

本当に、立派に成長してくれましたね。

 

 

 

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1000の手紙

あなたへ

 

あなたを想い、泣いてばかりいた私が、

そうだ。あなたへ手紙を書いてみようって、

こんなふうに思い立ったのは、

遺した人が、この先どんな人生を送るのか、少し気になると、

あなたが書き遺したこんな言葉があったからでした。

 

今日は、こうしてインターネットに載せて、

あなたへの手紙を届けることにしたきっかけを、

綴ってみようと思います。

 

あなたへの手紙を書くということを思いついた当初の私は、

あなたの場所の隣に、手作りのポストを置いて、

そこへ手紙を投函するというやり方を思いつきました。

 

いつの日か、私がこの世界を去る日が来たのなら、

ポストへ投函した手紙たちを一緒に、棺に入れてもらおう。

そうしたらきっと、全部の手紙をあなたに届けられるはずだから。

 

こんな思いつきが始まりでしたが、

やがて私の中に蘇ったのは、

いつかのあなたの言葉と、

それを裏付けるかのような不思議な出来事でした。

 

ねぇ、あなた。

あれは、いつの頃だっただろう。

 

心霊現象には、電化製品が関係したものが多いのは、

電気と向こう側が繋がっているからなんだよ。

 

確か、いつかのあなたは、こんな感じの話をしてくれましたね。

 

もう!やめてよ!

 

怖がりな私は、あの時、

こんなふうにあなたの話を遮ってしまったけれど、

あれから、ずっと先の未来では、

あの時のあなたの話を肯定せざるを得ない不思議な出来事が起こりました。

 

あれは、あなたを見送ってからの私たちが、

あなたの実家へ行った日のことでした。

 

あなたのお母さんとの談笑の中、話の流れから、

ほんの冗談のつもりで、あなたを揶揄うようなことを言ったら、

突然に電気がパチって消えたの。

 

皆、驚いていたけれど、何故だか私には、

ねぇ!聞こえてるからね!って、

こんなあなたの声が届いたような気がしていました。

 

あんなふうに、突然に電気が消えるのを見たのは、

後にも先にも、あの時一度きり。

 

その現象を、もう少し現実的に考えるのなら、

誤作動などの原因も考えられるのでしょう。

ですが、あんなにタイミング良く誤作動が起こるかしら。

 

瞬時にあなただと感じたことだけが、唯一の証拠だけれど、

そちら側と電気は密接な関係にあるのだというあの頃のあなたの説は、

きっと、間違いではないのでしょう。

 

あなたの側に、素敵なポストを作るという案も悪くはなかったけれど、

よく考えてみれば、

たくさん綴ったあなたへの手紙を棺に入れて貰うやり方じゃ、

その時が来るまで、想いを何も届けられないのかも知れないとも思いました。

 

それに、全部の手紙が棺に入り切るのかという点についても、

実はちょっと心配でした。

 

この量はちょっと・・・

なんて、葬儀屋さんを困らせてしまうかも知れないし、

私を見送るあの子も、それじゃきっと困ってしまうから。

 

まさか、あの時のあなたが話してくれた怖い話と、

この手紙が結びつくだなんてね。

 

なんだか笑ってしまうけれど、

インターネットの世界を、あなたが教えてくれたから、

怖い話を聞かせてくれたから、

そして、たった一度だけ、

あの、不思議な現象を見せてくれたから、

あなたへの手紙を、

こうしてインターネットに載せるという方法へと辿り着くことが出来ました。

 

このやり方なら、いつでもリアルタイムで、

あなたへの想いを届けられるのかも知れないなって。

 

こうして、初めてあなたへの手紙を書いたのは、

あなたを見送り、間も無く2年が経とうとする頃のことでした。

 

あれから、ゆっくり、ゆっくりと手紙を綴りながら、

気が付けば、これで1000通目の手紙になりました。

 

あの頃、中学3年生だったあの子は、立派に成長し、

間も無く新たな一歩を踏み出します。

そして、こうして改めて振り返ってみれば、

私自身も、大きく成長出来たように感じています。

 

あなたが書き遺した言葉を、改めて見つめてみます。

 

ねぇ、あなた。

あの夏からの私たちは、この世界で、

こんなふうに成長してきましたよ。

 

私が綴った文字たちが、

あなたの元まで届きますようにと願いを込めて、

これからも、ゆっくりと手紙を綴っていくよ。

 

こちら側の私から、そちら側のあなたへ。

愛を込めて。

 

 

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