あなたへ
先日、あの子がカラオケに誘ってくれました。
お母さんと最後にカラオケに行ったの、いつだった?
そんなあの子からの問いに、
私が最後にカラオケに行った日のことを思い出していました。
あれは、まだあなたが元気で側にいてくれた頃。
あの子が中学校に上がる少し前に、
あの子と一緒にカラオケに行った日が最後でした。
あの頃のあなたは、
仕事が忙しく、あなたを誘うことが出来ないまま、
あの子と2人でカラオケに出掛けたのでした。
また来ようね
小学生だったあの子とした約束は、
4年と少しの歳月を掛け、ようやく実現されました。
私から歌うことを取ったら、何も残らない
独身の頃、そう言い切っていた程に、
歌うことが大好きだったはずの私ですが、
あなたを見送り、
そんな自分を何処かに置き忘れたまま、日々を過ごして来たようです。
こうして時間を掛けて、
少しずつ、私自身のことを思い出していくのでしょうか。
カラオケルームの薄暗い部屋の中、
私たちが結婚する前に、
あなたと一緒にカラオケに行った日のことを思い出していました。
私が歌い終わると、
何故か、私の髪を撫でてくれたあなた。
あの日のあなたの手の感触と、あなたの笑顔を思い出し、
胸がキュンってなりました。
あの子のおかげで、
またひとつ、
あなたが遺してくれていた温もりを見つけることが出来ました。