あなたへ
あなたへ100通目の手紙を書きます。
あなたは何処かで、この手紙を読んでくれているでしょうか。
あなたを看取ったあの日、
入院中の荷物を引き上げて来たものの中にあった手帳を開きました。
それは、一般病棟へ移り間も無くに、
あなたに頼まれて買ってきた手帳でしたね。
そこには、一般病棟へ移ってからの事が書かれていました。
その日、受けた治療の事、メモを書き残したもの。
あなたらしい綺麗な字で書かれた文字を1ページずつ、時間を掛けて読みました。
その中にね、
自分の人生に、後悔はない
ただ、残した人が、この先、どんな人生を送るのか、少し気になる
こんなあなたの言葉を見つけました。
あなたは、私の知らないところで、考えていたのでしょうか。
長くは生きられないのかも知れない と。
あなたが書き遺した言葉に、胸が痛かった。
あなたに逢いに行った時の、嬉しそうな顔や、時々、不機嫌な顔。
どの顔にも、そんな事を考えていただなんて、思いもしませんでした。
あの頃の私は、あなたが、元気になり、帰って来てくれる事しか、
考えていませんでしたもの。
ひとりで、たくさん苦しんだのですね。
私は、あなたの側に寄り添う事で、少しでも、その不安な気持ちを、
取り除いてあげる事は、できましたか?
もしも、あの時、あなたがあのまま、回復し、
無事に退院する事ができたのなら、
きっと、私が読む事のなかったあなたの手帳。
きっとあなたは、退院後、間も無くに、
ひとりで苦笑いしながら、
その手帳をどこか目に付かない場所へ、仕舞っておいた事でしょう。
できる事なら、読みたくなかったあなたの手帳の中、
その短い文章は、あなたの本当の気持ちを教えてくれました。
もっと、ずっと、一緒に、生きたかったですね。
喧嘩したり、仲直りしたり、
そうして、一緒にいた分だけの絆を深めて行きたかったですね。
あなたがくれた、たくさんの大丈夫。
今日は、時々、心配性だったあなたに送ります。
離れていても、あなたを想う気持ちは、何も変わりません。
離れていても、ずっと、3人家族。
だから、大丈夫。
残した人が、この先どんな人生を送るのか、少し気になると、
こんな言葉を書き遺した私達の大切なあなたへ、
きっと、この手紙が届きますように。