拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

あの子の道

あなたへ


高校生になったあの子は、
すっかり、新しい生活に慣れると、徐々に、勉強をしなくなりました。


学校での、友達との時間は、楽しいけれど、
授業は、つまらない


何のために勉強するのかな


頑張って勉強しても、それが将来の役に立つとは思えない


これは、勉強をしなくなってから、時々、
あの子が口にした言葉でした。


受験勉強。
本当に、あの子は、よく頑張りました。


頑張り続けるということは、とても難しいもの。
本当は、こんな事を言ってはいけないのかも知れませんが、
やる気が出るまで、
今は、遊んでみるのもいいのではないかと、
最低限の宿題以外、勉強に関しての口出しをすることはせず、
私は、あの子を見守る事にしました。


そうして迎えた夏休み。
あまり、勉強をしている様子は見られないまま、
夏休みが、半分程を過ぎた先日、
あなたの命日の日の事でした。


普段は出掛けることが多いあの子ですが、
あの日は、1日、家にいた様子。


仕事から帰り、
出掛けなかったんだね
って、私の言葉に、
今日は、お父さんの命日だから、家にいたよ と、話してくれました。


この3年間が、長かったのか、短かったのか、
よく分からない3年間だったね


あの子はポツリと言いました。


そして、あの日、あの子と、将来についての話をしました。


頑張って、入った高校だけれど、
今は、少し、後悔しているということ


交通費を出して貰ってまで、
わざわざ通う理由が分からなくなってしまったということ


学校は、楽しいけれど、
そこでする勉強に、意味を見つけられなくなってしまったこと


学校を辞めたいわけではないし、卒業はするつもりだけれど、
今、自分のしている事は、将来のためになるのだろうかということ


将来、進みたいと考えていた道が、変わったこと


時々、黙ったり、考え込んだり、
頭の中を整理しながら、ゆっくりと話すあの子は、言いました。


お父さんみたいになりたい と。


「つくる」
が仕事だったあなた。


時々、話して聞かせてくれた、あなたの仕事の話を、思い返しながら、
あの子は、あなたにずっと、憧れていたんだと、気が付いたようでした。


そして、あの子は、言いました。


つくった人が、この世から、いなくなってしまっても、
その人がつくったものが、此処にあるって、凄いよね と。


まだ、何をつくりたいのかは、漠然としているようですが、
何処を目指していいのか分からなくなったあの子の瞳が、
再び、輝きを取り戻したように見えました。


小さな頃から、料理が好きで、
大きくなったら、自分のお店を持ちたいと、
夢見ていたあの子。


あなたを見送り、医療関係の仕事で、
病気で苦しんでいる人や、その家族の力になりたいと、
将来の夢が変わり、
少しでも、いい高校に進学しなくてはと、
必死で勉強に向き合ったあの子。


一歩、夢に近づくことが出来たあの子は、
再び、迷いながら、その先に見えたのは、
随分と、遠くに逝ってしまった、あなたの背中でした。


悩んだり、迷ったり、どのあの子も、
一生懸命に、ここまで成長してきました。


あなたを見送ってからの3年間。
やっぱり、あの子と私には、
まだ、とか、
もう、とか、
時間の経ち方に、何も付けることのできない、
ただの3年間でしたが、
あれから、丁度、3年目のあの日、
あの子は、あなたに憧れている自分を見つけたようです。


でも、本当はね、
私は、知っていました。


あの子は、いつの日か、こんなふうに、あなたを追いかけようとすることを。


だって、あなたは、世界一、かっこいいもの。


いつの日か、
あの子は、あなたの背中を超えたと思う日が来るのでしょうか。


超えられるものなら、超えてみろ


あの日の、あなたは、そんなふうに、笑っていたのでしょうか。

私と一緒に、あの子の話を聞きながら。

 

 

 

 

 

 

 

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