拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

思い出のカケラ

あなたへ

 

先日、あの子と一緒に出掛けた帰りのことでした。

 

ラーメン食べて帰ろうよ

 

あの子の提案から、帰りに、ラーメン店へ寄ることにしました。

 

あなたを見送ってから、初めてラーメン店へ入った私は、

あなたが聞かせてくれた、

数々のラーメン店での話を、思い出していました。

 

仕事中のお昼には、ラーメン店へ行くことが多かったあなた。

ラーメン好きな同僚に連れられて、色々なラーメンを食べに行っては、

話を聞かせてくれましたね。

 

店主が、フレンドリー過ぎて、笑っちゃうお店の話。

無口な店主だけれど、味は絶品のお店の話。

 

あれは、いつかのバレンタインデーの頃でした。

 

ハート形のチョコレートを持って帰って来たあなた。

テーブルに無造作に置かれた、

ピンクや赤の可愛い柄に包まれたそれらを見つけた私は、

ちょっぴり、焼いてしまったんでした。

 

これ、何?

 

男性ばかりの職場へ勤めていたあなたには、

縁遠いと思っていたハート形を指差しながら、

出来るだけ、平然を装い、感情を込めずに聞いたつもりでした。

 

あぁ、それね、今日行ったラーメン屋さんで貰ったの

何?ヤキモチ?

 

私が必死で隠したはずの感情を見透かしたあなたは、

嬉しそうに、私をからかいましたね。

 

誰から貰ったと思ったの?って。

 

あなたと過ごした日々の中の、

ラーメン店にまつわる私たちの、思い出のカケラたちは、

尽きることなく、溢れ出しました。

 

今度、連れて行きたいラーメン屋があるんだ

 

いつか、そんな話をしてくれたあなた。

 

あの時、あなたが言ってくれた、

「今度」を、私は、とても楽しみにしていたんでした。

 

場所も、店の名前も聞くことが出来なかった、

いつも、早くに店仕舞いをしてしまうそのお店には、

一緒に行くことができないまま、

あれから数ヶ月前後に、あなたは、安らかな最期を迎えました。

 

いつの頃からか、

友達と、色々なラーメン店へ出向くようになったあの子。

 

いつか、あの子が、見つける日が来るのかも知れませんね。

 

いつかあなたが、連れて行きたいと話してくれた、その店が、

知らずとも、

あの子にとっても、お気に入りのラーメン店になるのかも知れません。

 

そうして、いつの日か、

あの子に誘われて、

私も、そのお店に行く日が来るのかも知れませんね。

 

その時、私は、気付くことができるでしょうか。

 

あの時、あなたが連れて行きたいと話してくれたお店は、

きっと、此処だったんだなって。