「告別式の当日には、
故人様が使っていたお茶碗に、ご飯を山盛りにしてきてください。
それから、お箸、湯呑み、コップ。
こちらの粉を使って、団子を作って持って来て下さいね。
数は、地域の習慣などでも異なりますが、一般的には、6個とされています。
当日、式場で、
湯呑みには、お茶、コップには、お水を入れて、お供えしますね。」
打ち合わせで、プランナーさんから説明を受けた時にメモした紙を見ながら、
準備を進めている。
告別式の朝が来た。
最終の打ち合わせ
お坊さんへの挨拶
参列してくれた方々への挨拶
喪主を務める彼は、息つく暇もないほどに忙しい。
そんな彼について回っていた私だけれど、
ふと立ち止まり、会場内を見渡してみた。
遺影の背景も、お花も、ピンク色で揃えてくれた。
これは、あの子が選んでくれた色だ。
「お母さん、ピンクが好きだよね。喜ぶかな。」
打ち合わの時に、あの子がポツリと呟いた言葉が蘇る。
『うん。嬉しいよ。ありがとう。』
私は、暫くの間、祭壇を見つめ、
この景色を胸に焼き付けようと決めた。
これは、最後に、彼らが私にしてくれたこと。
絶対に、忘れないよ。
気が付けば、
参列者が少しずつ、増えはじめていた。
私は、誰に気付かれることもなく、
来てくれた一人ひとりに、言葉を掛けた。
『お世話になりました。
これまで、ありがとうございました。
彼が困った時には、お願いしてもいいですか?
来てくれて、ありがとう。
ごめんね、突然こんなことになっちゃって。
友達でいてくれてありがとう。
楽しかったよ。』