拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

夏休みの始まりに思い描いた未来

あなたへ

 

我が子が社会に出ると、

夏休みや冬休み、春休みの感覚が薄れて行くのだと、

かつての職場の先輩が、こんな話を聞かせてくれたことがありましたが、

あの頃の先輩の言葉の意味が、漸く、私にも分かったような気がします。

 

朝から元気に自転車に乗って遊びに出掛ける子供たちの姿を眺めながら、

夏休みはとっくに始まっていたのだと、漸く気が付いたのは、

7月も、間もなく終わりを迎える頃のことでした。

 

元気な子供たちを眺めながら、

あの子にもあんな頃があったなって、懐かしく振り返りながら、

あの子が過ごした夏休みを順番に思い出していました。

 

あの子がその人生の中で、経験した夏休みは、全部で17回。

 

こちら側の事情や勉強のスケジュールから、短い夏休みもありましたが、

その殆どは、私たちがよく知る長い夏休み。

それら全てを順番に思い出してみれば、そこにもあの子の成長がありました。

 

夏休みには、家族で特別な思い出を作りたいと、

こんな気持ちであの子の夏休みを迎えたのは、あの子が小学生までの頃のこと。

やがて、

友達との時間を優先するようになったあの子の笑顔を見つめながら、

社会人になれば経験することの出来ない貴重な時間だからこそ、

今しか作ることの出来ない素敵な思い出を、

たくさん作って欲しいと願うようになって、

あの子の夏休みは、

「一緒に遊ぶ夏休み」から、「見守る夏休み」へと変化して行きました。

 

あの子と一緒に出掛ける機会は、少しずつ、少なくなっていったけれど、

普段はすることの出来ない経験をしたあの子の話に耳を傾けることも、

そして、勉強が楽しいと笑うあの子の声に耳を傾けたことも、

私にとっての掛け替えのない時間でした。

 

あの子の成長と共に、夏休みの在り方は変化していきましたが、

こうして振り返ってみれば、

どの夏休みにも、あの子との大切な思い出が残っています。

 

社会へ出たら、過ごすことの出来ない長い夏休みを、思いっきり楽しんで欲しい。

あの子の成長と共に、

こんなふうに毎年の夏休みの始まりに思い描いた未来が今、

此処にあります。

 

もう、あの子には、あんなに長い夏休みはやっては来ませんが、

今過ごす日々の中には、

学生の頃には知らなかった楽しさがあるのだと、

こんな話を聞かせてくれたのは、先日のあの子でした。

 

もしも今、

あんなに長い夏休みを貰うことが出来るのであれば、欲しいなと笑いながらも、

やはり、今がとても楽しいと、

少しずつ社会人としての生活にも慣れてきたあの子は、

更に前のめりに、日々の生活を送っているようです。

 

社会人になったあの子は今、

長い夏休みを卒業した代わりに、

これまで知らなかった景色の中を、

元気よく、歩んでいます。

 

 

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