拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。

最後の8月

あなたへ

 

今年も、夏が終わります。

今日は、8月最終日。

 

夏の終わりを惜しみながら、空を見上げ、

3人で見た空を思い出していました。

 

最後に、あなたと一緒に、同じ空を見たのは、

病室から見た空でしたね。

 

空調が効いた病院内、

窓際のベッド、

家族3人での談笑。

 

外はね、凄く暑いんだよ

 

そんな私の言葉に、

 

そっか

 

そう言って、目を細めて、ベッドから、空を見上げたあなたのこと、

今でも、よく覚えています。

 

あれは、梅雨明けしたばかりの、

間も無く、7月が終わりを迎えようとしている頃のことでした。

 

救急車で運ばれ、緊急手術をし、

今夜が峠だと言われながら、

周りが驚くほどの回復を見せ、一般病棟へ移ることが出来たあなた。

 

場所は、病室ではあったけれど、

いつもと何も変わらない、家族3人の時間を過ごすことが出来た最後の7月は、

奇跡みたいな時間でしたね。

 

このまま、奇跡の中で、

私たち家族3人は、生きていくのだと思っていました。

 

あなたと過ごした最後の8月は、

意識がないあなたの側で、

ただ、その温かな手を握り締めていました。

 

あなたは、最後の8月を知らない。

 

生きていたのに、その瞳には、何も映ることがないまま、

その手を離さなければならない日が来ました。

 

せめて、あなたが生きた最後の8月の記憶に、

この手の温もりと、

あなたの名前を呼ぶ声が、残ってくれていたらいい。

 

もしも、どこかに神様がいるのなら、

こんな私の願いを、聞き入れてくれるでしょうか。

 

丁度、5年前の私は、

この夏にあなたを置いて、ここから先へ、進まなければならないのだと、

そんな気持ちで、空を見上げたのでした。

 

今の私は、

あの頃よりも、上手に歩めるようになったでしょうか。

 

また今年も、あなたが知らない夏を見送りながら、

あの夏の、あなたの手の温もりを、

そっと思い出していました。