拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

コトバ -夏の音-2022

待ってたよ

 

思わず呟いたのは

梅雨明けから

どれくらいが経ってからだっただろう

 

今年の梅雨明けは例年よりも早く

思えば

静かな夏の始まりだった

 

待ち侘びた夏の音を聴きながら

彼がいた夏の記憶を順に辿ってみる

 

私を呼ぶ彼の声

 

繋いだ手の温もり

 

まだ膨らみのないこのお腹に

手を当てて笑う彼の姿

 

小さなあの子に向けた幾つもの彼の笑顔

 

3人で夢中になった水遊び

 

遊び疲れて眠るあの子を抱いて

寝室に運ぶ彼の

あの子を見つめる優しい眼差し

 

夏の音を聴きながら

彼と出会って幾番目かの記憶の中に立ち止まり

そっと問い掛けてみる

 

その腕に抱いた小さなあの子の温もりを

今どんなふうに感じていますか

 

小さなあの子を抱いたまま

不意に顔を上げたあの頃の彼が

 

あまりにも穏やかで

優しい笑顔を見せてくれるから

 

思わず

大きく息を吸い込んで

空を見上げてみる

 

あなたを見送ってから

8番目の夏のあの子もよく笑ういい子だよ

 

空の彼方へ呟きながら

堪え切れずに落とした涙の音を

夏の音がそっと搔き消して

 

歪む視界の向こう側に

ただ穏やかに頷く彼の笑顔を見せてくれた