あなたへ
あなたがよく知るあの子の髪型は、いつでも、ちょっと長めの髪型でしたね。
あの子が幼なかった頃の写真を見れば、
どの写真も、耳に掛かるくらいの髪の長さで、
いつだったかのあの子は、
ショートカットの女の子と間違えられてしまったことがありましたっけ。
あなたを見送り、どれくらいが経った頃からだったでしょうか。
いつの頃からか、
あの子は、短めの髪型を好むようになりました。
美容室へ行くのは、数週間に一度。
常に、短くカットした髪型を維持していました。
少し、髪を伸ばしてみようかな
こんな言葉を聞いたのは、
あの子が、高校卒業を間近に控えた頃のことでした。
コロナウイルスの影響により、美容室へ行くことを自粛しているあの子は、
自分で、バリカンを使って、ツーブロックを入れるようになりました。
もう、何度、自分でバリカンを使ったでしょうか。
バリカンの使い方にも慣れて、
とても上手に仕上げることが出来るようになりましたよ。
両サイドにツーブロックを入れ、伸ばし始めたあの子の髪は、
ここ数年の中で、1番、長くなりました。
先日のあの子は、あなたの遺影をじっとみつめて、言いました。
俺も、髪を伸ばしたら、似合うのかなって。
あなたによく似たあの子。
あなたみたいに長めの髪型も、きっと、よく似合うのでしょう。
これから、どんなあの子の顔を見ることが出来るのでしょうか。
なんだか、とても楽しみですね。