あなたへ
ふと思い出した昔話をします。
これは、私が高校生だった頃のお話です。
私には、高校の3年間、同じクラスだった友達がいました。
お互いの自宅が、そう離れていなかったこともあり、
いつの頃からか、その子と一緒に、登下校をするようになりました。
今日、お茶して帰らない?
学校帰りには、寄り道をしたりと、
どこにでもある、普通の高校生活を送っていたある日のことでした。
その日は、学校のすぐ側にある喫茶店で、
お茶をしてから帰ろうと約束をしていた日でした。
校門を出て、間も無くのところで、別な友達と会った私たちは、
暫しの談笑をしていましたが、
その時の私は、いつもなら、絶対にしないような行動をとったのでした。
ねぇ、早く行こうよ
何故だか、私は、強引に、
お茶をする約束をしていた友達の手を引いて、
喫茶店の方へと歩き出したのです。
歩く私に引っ張られるように、その場から離れた友達。
それまで談笑していた子も、
またねと手を振って、その場から離れて行きました。
その直後です。
目の前の道路で、接触事故を起こした車が、
先ほどまで私たちが立っていた場所へ、突っ込んで来たのでした。
あと3秒遅ければ、私たちのいつもの日常は、
もう、そこにはなかったのでしょう。
実は、あの出来事が起こる1年ほど前に、
いつも登下校を共にしていた友達の家族が亡くなりました。
あの時の私は、何の根拠もないままに、
亡くなった家族が、友達のことを守るために、
自然に近い形で、私を動かしたのではないかと考えました。
いえ、そう確信したと言っても良いでしょう。
だって、普段の私なら、
話の途中で、強引に引き上げるだなんて、考えられませんでしたから。
思い返してみても、そんな強引なやり方をしたのは、
あの時、一度きりのことでした。
とても不思議な体験をしながらも、
これまで、一度も思い出すことがなかったのは、
車に乗っていた方にも怪我はなく、
誰も傷付かずに済んだからだったのだと思います。
きっと、あなたは何処かに存在し、
私たちが考えているよりも、
ずっと力強く、守ってくれているのかも知れないな。
記憶の奥に眠っていた不思議な出来事を思い返しながら、
やはり、目には見えない力は、存在するのだろうと、
改めて、考えさせられました。