あなたへ
お母さん、知ってる?
徳川埋蔵金が隠されている場所はね
実は、特定されているんだよ
こんな言葉から始まった、あの子の話は、とても興味深いものでした。
あの子の話によれば、
童謡『かごめかごめ』は、徳川の埋蔵金のありかを示す歌だと言うのです。
この歌を広めたのは、松尾芭蕉で、
彼は、服部半蔵だった説もあるんだよ
あの時代に、全国に歌を広めるだなんて、凄いよね
聞けば、松尾芭蕉が、服部半蔵と結び付けられた理由としては、
奥の細道で歩いた距離と、
交通規制が厳しかった時代にも関わらず、
厳重な警戒が敷かれている関所も通ったとされているからだそうです。
そして、
埋蔵金のありかを特定しながらも、それを掘り起こさない理由は、
これまでの歴史が大きく変わる可能性があるからなのだとか。
どこから仕入れて来た情報なのか、
あの子は、とても楽しそうに、話を聞かせてくれました。
恐らく、日本中の誰もが知る、かごめかごめ。
私はずっと、あの歌は、怖い歌なのだと思っていました。
後ろの正面って何?
夜明けの晩っていつのこと?
その不思議な表現に、友達と騒いだ日の夜に、
怖くて眠れなくなってしまった、幼かった頃のことを思い出します。
あの頃、あんなに怖かったあの歌が、
埋蔵金のありかを示す歌であった可能性があるだなんて。
あの子の話には、とても驚きました。
思えば、社会科が大の苦手だった私が、
少しずつ、歴史に興味を持てるようになったのは、
あなたが側にいてくれたからでした。
歴史に関する映画を観る時には、
あなたの易しい解説付き。
私が出会ったどの先生よりも、分かりやすいあなたの解説に、
私は、少しずつ、歴史に興味を持つようになっていったのでした。
歴史が好きだったあなたなら、
どんな顔をして、あの子の話を聞いたのだろう。
もしも、あの子の話が本当なら、
出来れば、私が生きている間に、埋蔵金が発掘されたらいいな。
ふと、こんなことを考えました。
歴史が好きだったあなたの代わりに、その歴史的瞬間をこの胸に刻んで、
いつか、あなたにも、話して聞かせてあげたい。
いつの日か、私がそちら側へ旅立ち、あなたと逢えたら、
あなたを見送ってからの出来事を話して聞かせながら、
唐突に切り出すの。
ねえ、あなた
徳川埋蔵金はねって。
こんな私の言葉に、あなたは、どんな顔をするのだろう。
いつも冷静だったあなたの驚く顔も見てみたいの。