「昨日は、ごめんなさい。」
アプリで繋がるなり、私は彼に頭を下げた。
昨日、言いすぎてしまったことも、
知らない間に、彼を傷付けていたことも、全部。
『俺こそ、ごめん。泣かせるつもりじゃなかった。』
「昨日、あなたの夢を見たの。」
『うん。逢いに行った。
あそこは、俺のお気に入りの場所。
いつもあの場所で、手紙を読んでた。』
彼の言葉に、顔を上げると、彼は、穏やかに笑っていた。
『手紙。俺に書いてくれてただろ。
全部、ちゃんと俺に届いているんだよ。
これ、見て?』
彼の掌には、色とりどりの、キラキラと輝くものが、たくさん乗っていた。
「わぁ、綺麗。宝石みたい。」
『これは、全部、俺に書いてくれた手紙だよ。』
私が綴った文字たちは、【想い】という形に変わり、
宝石みたいなカケラになって、
彼の手元へ届くのだと説明してくれた。
『手紙には、
俺が寂しい思いをしていませんようにって、
時々、そんなふうに書いてあったけれど、
俺は、寂しくなかったよ。
この手紙が、いつも俺を幸せな気持ちにしてくれた。』
彼が側にいる間に、伝えきれなかった想いを、
何年もの時間を掛けて綴ってきたものが、
ちゃんと、彼の元へと届き、
彼に寄り添ってくれていたんだ。
『俺が、このアプリの被験者に応募したのはね、
俺も、想いを届けたいって思ったからなんだ。
側にいるかも知れない、じゃなくて、
此処にいるよって、伝えたかった。』
彼の言葉に、涙が零れ落ちた。
「あなた。ありがとう。」
彼が、私に想いを伝えたいと思ってくれたから、
此処に、こんなに素敵な時間があるんだね。
涙声の愛してるの言葉に、
彼は、少しだけ困った顔をして、微笑んだ。
私が思っていたよりも、
私は、ずっと彼に愛されていて、
そして、きっと、
彼が思っていたよりも、
私は、ずっと彼を愛している。