「なんだか、若返ったんじゃない?」
「なにか始めたの?」
いつものお茶飲みメンバーたちが、一気に詰め寄ってきた。
特に何もしていないと言う私の言葉を信じてもらえずに、
この日の話題は、主に、
私の普段の生活についてとなった。
「化粧品変えたの?」
「変えてないわよ。」
「どんな化粧品使ってるの?」
「肌が弱いから、肌に優しいものよ。」
「いつも何を食べてるの?」
「お味噌汁は、出来るだけ毎日飲むようにしているけれど、
あとは、食べたいものを食べているわ。」
お風呂のお湯は何度?
何時に寝て、何時に起きてるの?
朝起きたら、まずは何をしてるの?
彼女達からの質問は、止まることがなかった。
幾つになっても、綺麗でいたい。
いつの時代になっても、
これは女性の永遠のテーマなのかも知れない。
「分かった!恋、してるでしょ?」
これは、私の隣に座る彼女の声。
「恋は、ずっとしてるわよ。夫に。」
「亡くなった旦那さんのこと?今まで、ずっと?」
信じられないとでも言うように目を丸くするのは、
私の向かい側に座っている彼女だ。
「旦那さんが亡くなったのって、若い頃よね?
再婚とか、考えなかったの?」
「考えたこと、なかったわね。」
誰かを想うのに、
その人が何処にいるのかなんて、
きっと関係ない。
私には、他の誰かを想う隙間なんて、少しもなかった。
彼が亡くなり、
その温もりを感じることが出来なくなってしまってからも。
そして、今も。
恋は人を綺麗にすると言う。
私は何度、彼に綺麗にしてもらうのだろう。