拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あなたが知っている私の姿

あなたへ

 

ここにある本を、全部読んでみたい。

 

ふと、こんな気持ちを思い出したのは、

先日、本屋さんへと立ち寄った時のことでした。

 

探しもののために本屋さんへと立ち寄ったあの日。

結局、探していたものは見つからなかったけれど、

その変わりに、不意に見つけることが出来たのは、

私の中に眠り続けていた、あの夏までの気持ちでした。

 

蘇ったばかりの感覚を楽しむように、

ワクワクとしながら、様々な本を見て回った私は、

2冊の本を選びました。

 

あなたを見送ってからの私だって、

時間を見つけては、本屋さんへと立ち寄り、

時々には、本を買って、それを読む時間を楽しんでいたはずなのに、

本屋さんや、図書館へ行った時の、

あの、ワクワクとしてしまうような感覚を、

思い出す前の私と、思い出した今の私とでは、

本を見る感覚がまったく違うような、不思議な気持ちがしました。

 

私は、どれだけのものを、あの夏に置いて来てしまったのだろう。

 

此処までの道のりを歩みながら、時々、こんなふうに、

あの夏までの自分を見つけてきましたが、

今回も、またひとつ、

あの夏までの私が持っていた感覚を思い出しました。

 

私はきっと、こうして少しずつ、

あなたがよく知っていた頃の私に戻って行くのでしょう。

 

まるで、新しい感覚を手に入れたかのような気持ちで、

あのワクワクとした気持ちを反芻してみれば、

あの頃、色々な本をプレゼントしてくれていたあなたの気持ちが、

分かったような気がしました。

 

あの頃の私はきっと、無意識のうちに、

私が思っていたよりもずっと、楽しげな顔をして、

読んだことのない本を眺めていたんだね。

 

一緒に本屋さんへと立ち寄った日には、私の気が済むまで、

ひとりにしておいてくれたあなた。

 

きっと、あの時のあなたは、様々な本を眺める私の姿を、

離れたところから、そっと見ていたんだろうなって、

ふと、あなたが見ていたあの頃の私の姿が、

見えたような気がしました。