拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

ひとりでお盆を迎える予行練習

あなたへ

 

未来を思い描きながら、

小さな胸の痛みを感じた日のことを思い出していたのは、お盆の前日。

提灯を組み立てていた時のことでした。

 

未来には、いつでも想像を超えた素敵な景色があるものなのだと、

これまでの私は、様々な出来事からこんな視点を集めてきましたが、

今年のお盆を迎える準備を整えた日の私も、そんな瞬間を感じることが出来ました。

今日は、私が新たに見つけた気持ちを、あなたにも話してみたいと思います。

 

あなたを見送ってからの毎年、

お盆の提灯の組み立ては、あの子が担当してくれていました。

 

提灯の組み立て方を知らないままに歩んできた私が、

初めて提灯を組み立てたのは昨年のことでした。

 

出掛けてくるから、今年は提灯の組み立てお願いね

来年からは、俺はいないんだよ

これからは、毎年、ひとりで組み立てるんだよ

これは予行練習だね

 

こんな言葉を残してあの子は出掛け、

ひとり、家に残された私は初めて、

提灯の組み立てに挑戦したのでした。

 

ひとりで提灯を組み立てたあの日の私が、胸の中に見つけたのは小さな痛み。

来年からはもう、あの子は側にいないんだな

これからは、ずっとずっとひとりで、こうして提灯を組み立てて、

お盆の準備を整えるんだなって。 

 

あの日の私は、

きっと毎年、こうして胸の中の小さな痛みに向き合いながら、

提灯を組み立てるのだと、小さな覚悟を決めたはずでしたが、

今年の私の胸の中には、もう、あの痛みは存在せずに、

思えば、昨年はこんなことを考えていたなって、

あの痛みを思い返しながらも、

ただただ、あなたとあの子が帰って来てくれることが嬉しくて、

ワクワクとした気持ちで、

軽快に提灯の組み立てをすることが出来ました。

 

きっとね、

ひとりで提灯を組み立てることが、今年が初めてであったのなら、

こんな気持ちにはならなかったのだと思うのです。

 

あなたとあの子が帰って来てくれることを楽しみにしながらも、

きっとどこかでほんの少しだけ、胸の奥がチクリと痛んで、

これから、ずっとひとりなんだなって、

昨年に感じたあの気持ちを見つけることになったと思うのです。

 

今年の私が、ただワクワクとした気持ちで、

提灯を組み立てることが出来たのは、きっと、

あの子とのいつもと変わらない日常生活の中で、

予行練習をすることが出来たお陰なのだと思いました。

 

楽しみにしていたお盆が過ぎて、

私はまたこの家にひとりになったけれど、

片付けをする時も、胸の中へと集まったばかりの、

たくさんの素敵な時間を思い出しながら、

もう一度、しっかりと、大切な記憶を振り返る時間が流れて。

 

あの子は、此処から巣立つ前に、

未来の私が、様々な物事へひとりで向き合うことが出来るようにと、

細部に渡って、私に準備をさせる時間をくれたのだと思います。

 

私は、私が思っていた以上に、あの子に守られながら、

ひとりになる準備を重ねて来ることが出来たのだと、

提灯を組み立てながら、こんなことを考えていました。

 

人生はとても上手く出来ていると感じる出来事を、

これまでの私は、幾つ、見つけてきたでしょうか。

此処にまたひとつ、そう思える出来事を集めることが出来ました。

 

初めて、ひとりで提灯を組み立てた昨年の私は、

胸の奥に見つけた痛みと向き合うことになったけれど、

見つけた痛みを感じ切ったのなら、

次に見える景色は、いつだって想像を超えた素敵な景色。

 

予行練習を終えて、ひとりを迎えた私は、

昨年には想像もしていなかった素敵な気持ちを知ることが出来ました。

 

来年、再来年の今頃の私は、

またきっと、

今の私が知らない素敵な気持ちを集めることが出来るのでしょう。

 

 

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