拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

ひとりで生きて行くためのテスト

あなたへ


あれは、一人暮らしが始まった私への、
あなたからのテストだったのでしょうか。
もしもそうだとしたのなら、追試では合格点を貰えたでしょうか。

あれは、お盆期間中のことでした。
丁度、あの子と一緒に寛いでいた時間に、突然、警察官の訪問があったのです。


対応時間は、ほんの僅かな時間。
巡回のために、一件ずつ訪問しているとの説明を受け、
一通りの対応をして、ドアを閉めましたが、
私の対応を静かに聞いていたあの子から、お叱りを受けてしまいました。


誰が来たの?
その人、本当に警察の人?
警察手帳は見せて貰ったの?
家の情報、話したよね?
詐欺だったらどうするの?
見た目だけで信用しちゃ駄目だよ
もしも、もっともらしい理由をつけて、
家の中に入らせてくださいって言われたら、家に入れたでしょ

家に警察の方が来ることなど初めてのことでした。
どちらかと言えば、疑い深いタイプであるはずの私ですが、
あの日の私は、警察という言葉とその姿に完全に安心しきって、
その身分を確認せずに、聞かれたことを素直に答えてしまったのです。

あの子の言葉の通り、
確かに、納得出来る内容のものであったのなら、
仮に家の中に入らせてほしいと言われていたとしても、

了諾していたのかも知れません。

一通りのお叱りを受けた後、あの子は出掛け行きましたが、
ひとりになって、改めてあの子の言葉を反芻しながら、
不安になってしまった私は、
インターネットを使って、この辺りの情報を調べてみましたが、
何の情報も見つけることが出来ずに、
不安な気持ちばかりがどんどん膨らんで行きました。


そうして私は、悩んだ挙句、
警察署へ問い合わせをしてみることにしたのでした。

結果的に、我が家にやって来たのは、
本物の警察の方で間違えありませんでしたが、
ほっとしながらも、ひとりで生きて行くためには、
私にはまだまだ、足りないものがあるのだということを、
深く考えらさせられたのでした。


あの日のことを時々振り返っては、
あれは、あなたが私に与えた、
ひとりで生きて行くためのテストであったのではないかと、
実はこんなふうに考えていました。


だって、
お盆期間中に起こる出来事には必ず、
あなたが深く関わっているはずですから。


もしも、あの時間にあの子がいてくれなければ、
私は、何の疑問も持たないままに、
やり過ごしていただけだったのでしょう。


ですが、そうはならずに、
出たり入ったりと忙しなかったあの子が家にいた、
限られた時間の中で、あのようなことが起こりました。
それは、あなたが作り出した偶然を装った必然であったように感じています。


あの日のあなたが私に与えた、
ひとりで生きて行くためのテストの結果は、きっと不合格。


あの子からのお叱りは、きっと、補習授業であったのでしょう。


そうして、これは追試だと言わんばかりの訪問者がやって来たのは、
お盆が過ぎ、日常生活へと戻ってからのことでした。
今度は、別な警察の方が巡回に来られたのです。


あの日の私は、
きちんと手帳を見せて貰った上で、対応をしました。


ねぇ、あなた。
どうでしょうか。
あの日の私は、追試に合格出来たでしょうか。


あの子が巣立ち、ひとりになった私は、
これからこうして、ひとつずつ、
これまでとは違った様々な視点からのことを、
学んでいかなければならないのでしょう。


本当に大丈夫かしらと僅かに不安もありますが、
あなたにも、あの子にも心配を掛けぬよう、

少しずつ学びながら、成長していきたいと思っています。

 

 

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