拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

あの子の正しい起こし方

あなたへ

 

成人式を迎え、20歳の誕生日を迎えたあの子は、

成人男性という括りの中へ仲間入りしましたが、

相変わらず朝がとても苦手で、なかなか起きることが出来ません。

 

此処から巣立った後のあの子は、

ひとりでちゃんとやっていけるのだろうかと、

時には心配にもなってしまいますが、

きっとそこは、ひとりになって初めて成長する部分でもあるのでしょう。

 

朝、あの子を起こすのは、相変わらず私の役目です。

 

もう、以前のように、

凶暴な顔をしたジョニーが現れることもなければ、

いつの間にか、お兄さんジョニーの姿も見られなくなりましたが、

時々、寝惚けて腕を振り上げることだけは変わりません。

 

武道を卒業したとは言え、

長年培ったその技術は健在で、

例え寝惚けていても、あの子の動きには隙がありません。

 

筋トレを始めたあの子の腕は逞しく、

もしもあの腕を振り上げられたらと思うと、恐ろしさは増すばかり。

なかなか起きないあの子を揺すりながらも、

私は常に、警戒体制で朝の戦いへと臨むのです。

 

そんな気の抜けない朝を過ごしながら、

私は遂に、あの子の正しい起こし方を見つけました。

 

その方法とは、褒め称える、です。

 

ほら!早く起きなさい!

ではなく、

今日も筋肉が逞しくね

また少し、筋肉が大きくなったんじゃない?

あの子を揺すりながら、こんなふうに声を掛ければ、

え?本当?

なんて、パチッと目を開き、スムーズに起き出すではありませんか。

 

なんだか笑ってしまいますが、

それほどまでに、今のあの子は筋肉に夢中なのでしょう。

 

私の言葉に機嫌良く起き出したあの子は、

朝から、鏡を見つめて筋肉のチェックを。

そうして、

どう?また少し筋肉ついたでしょう?って、

ここ最近は、少しだけ面倒で笑ってしまうこんな会話が、

1日の始まりの合図となりました。

 

あの子の正しい起こし方を発見したことで、

これまでとはまた違った朝を見つけることが出来ました。

 

こんな朝をあの子と過ごすことが出来るのも、

あとどのくらいかな。

 

日々のあの子の成長に喜びながらも、

胸の奥に、ほんの少しだけ、

チクリとした小さな痛みを感じてしまいますが、

少しだけ面倒で、とても愛おしい朝の時間を大切に、

あの子との日々を楽しく過ごしています。

 

www.emiblog8.com

 

www.emiblog8.com