画面の向こう側、眠っている彼女を見つめた。
『辛い思いをさせて、悪かった。
でも、ちゃんと見ておきたかったんだ。
辛くても、前を向いて歩もうとするお前の姿を。
そうじゃないと・・・意味がないんだ。』
彼女の涙を拭い、頬に手を当ててみる。
俺は、何度こうして、彼女の涙を拭ってきただろう。
俺がこっちに来たばかりの頃は、危なっかしくて、
一時も目が離せなかった。
あれは、俺より、4つ年下だった彼女。
あれから、ゆっくりと、一歩ずつ前へと歩みながら、
時折、後ろを振り返り、涙を流していた彼女の側に、
俺はいつでも、寄り添ってきた。
俺と同じ年齢になった彼女。
ひとつ、ふたつと、俺よりも年上になっていった彼女。
俺は、全部の彼女を知っている。
側にいるよ
彼女には届かないと知りながら、
俺は、何度も彼女に語りかけながら、
こうして、涙を拭ってきた。
でも、今日の涙は、これまでとは違う。
彼女は、もう、大丈夫。
『俺は、いつでも側にいるよ。
だから、安心して、その夢を叶えておいで。』
眠っている彼女は、俺の声が聞こえたかのように、
微かに微笑んだ。
もうすぐで、8月8日が終わる。
初めて、俺に見せてくれた彼女の浴衣姿を、
しっかりと、目に焼き付ける。
俺が全部、覚えているからな。
絶対に、忘れないから。
通話残り時間、5秒前。
4
3
2
『愛してるよ。』
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