拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

不自然な涙の拭い方

あなたへ

 

あなたはまた、私の涙を拭ってくれたんだね。

 

間も無く零れ落ちそうになる涙を、

あなたが、そっと拭ってくれたことは、

これまでに、何度、あったでしょうか。

 

その姿が見えないままに、

静かに涙を拭ってくれるのが、

あの夏からのあなたのやり方だったね。

 

不自然なまでに、スッと涙が乾く瞬間は、

あの夏から、何度、経験してきただろう。

 

どんなに泣いても、
そこで永遠に立ち止まったりはしないから

私は大丈夫

 

いつかこんな手紙を書いたけれど、

思えば、あなたは、

私が思っていたよりもずっと、心配性だったね。

 

どんなに待っても、涙が零れ落ちなかった代わりに、

思い出していたのは、

あなたに擽られて笑った日のことでした。

 

私が笑えないでいると、あなたは決まって私を擽って、笑わせたね。

 

あの頃だって、嫌なことや辛いことはあった筈なのに、

どんなに辛いことがあっても、あなたは決まって私を笑わせたから、

あの頃の私が、どんなことで悩んでいたかなんて、

もう、ひとつも思い出せないの。

 

その代わりに、あなたと一緒に笑った記憶だけが、鮮明に残っているよ。

 

もう、あの頃みたいに、

私を擽って笑わせることが出来ない代わりに、

不自然な涙の拭い方で、私を泣かせようとはしないあなた。

 

これがきっと、今のあなたのやり方なんだね。

 

涙が乾いて、鮮明に瞳に映ったあなたの顔をじっと見つめてみれば、

あなたが、とても穏やかな顔で笑うから、

思わず、私も、あなたに笑い掛けてみる。

 

私は、大丈夫だよ。

 

 

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