彼女の中の記憶を抹消し、時間を戻した後、
俺は、彼女のすぐ側で、目を覚ますまでを見守った。
目を覚ました彼女は、部屋中を見渡し、不思議そうな顔をした。
「あら、嫌だ。寝ちゃったのかしら。」
そんなことを呟きながら。
一見して、アプリで繋がる前と何も変わらない様子の彼女の姿を、
注意深く見守っていると、
彼女は、俺に、線香を立てて、手を合わせた。
「ねぇ、あなた。聞いて?
今ね、とても素敵な夢を見ていたのよ。
とても長い夢だった気がするけれど、あまりよく覚えていないの。
でもね、どこか、素敵な場所で、
あなたが雪を降らせてくれたことだけは、ハッキリと、覚えているわ。
ピンクとか、青とか、黄色とか、
色とりどりの雪を降らせてくれたのよ。
とても、素敵な夢だった。
私ね、夢の中で、あなたと過ごしながら、
やってみたいことを見つけたの。
なんだか、とても不思議ね。
でもね、これはきっと、あなたのお陰なのよ。
あなた。ありがとう。
私、頑張るね。」
俺に向かって、話してくれる彼女の声は、とても楽し気で、
思わず、俺まで、笑顔になりながら、彼女の話に頷いた。
後ろを向いて、泣いていた彼女は、もう此処にはいない。
今、彼女の瞳に映る景色は、
色鮮やかな景色が広がっているのだ。
嬉しそうにしている彼女に、そっと寄り添い、
彼女の髪を撫でると、何故か、涙が零れ落ちた。
それが何の涙であるのか、よく分からないままに、
俺は、涙を拭い、彼女を抱き締めた。
あれからの彼女は、いつでも前向きに頑張っている。
その証拠に、彼女の魂の輝きは、
これまでに見たことのないような素敵な色を放ち、
俺を驚かせた。
あれからも、変わらずに届く彼女からの手紙には、
希望に満ち溢れた素敵な想いが並んでいる。
何かに挑戦する時、年齢は、全く関係ない。
きっと、彼女は、この先もずっと、
何かに挑戦し続けるのだろう。