拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

前髪 -2021-

あなたへ

 

前髪を切りました。

 

あなたが切ってくれていたみたいに、

上手に前髪を切ることが出来る様になってから、

どれくらいが経ったでしょうか。

 

何度、挑戦してみても、曲がってしまった幾つもの失敗から、

やがて、あなたみたいに、上手に切れた日を迎えました。

 

綺麗に切り揃えることが出来た前髪を見つめながら、

私の中に、思ってもいなかった感情を見つけたのは、

初めて、前髪を上手に切ることが出来たあの日のことでした。

 

あなたみたいに、上手に切れる日など、

来なくても良かったのだと。

 

あの頃のあなたに追い付いてしまったことが、

なんだかとても悲しくて、

本当の私は、いつまでも、あの頃のあなたを追いかけていたかったのだと、

あの日、初めて、こんな感情を見つけたのでした。

 

上手に、前髪を切れるようになったことが苦しくて、

少し長めになるまで、切ることが出来ずにいた私ですが、

そんな苦しさから開放してくれるかのように、私の中に蘇ったのは、

あなたの笑顔でした。

 

上手に切り揃えられるようになった前髪を見つめながら、

今の私が、こうして当たり前に前髪を切ることが出来る様になったのは、

あなたのお陰なのだと、

あの日、蘇ったあなたの笑顔を思い出していました。

 

どんなに些細なところにも、あの頃のあなたが隠れていて、

私が悲しい気持ちを抱えれば、笑っちゃう記憶を蘇らせてくれる。

 

私は、何度、こうして、

あの頃のあなたに救われて来たのでしょうか。

 

ねぇ、あなた、どう?

あの頃に見た馬みたいでしょ?

 

切り立ての前髪を見つめながら、

あの日のあなたの笑い声を思い出してみる。

 

あなたみたいに、上手に切れるようになったけれど、

今はもう、悲しい気持ちはしないよ。

 

だって、

あの頃のあなたが、とても楽しそうに笑うから。

 

 

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