拝啓、空の彼方のあなたへ

きっと、空に近い場所にいるあなたへ伝えたいこと。手紙、時々、コトバ。    <夫と死別したemiのブログ>

最愛の人の死

あなたへ

 

ねぇ、あなた

今日はね

 

ねぇ、あなた

聞いて?

 

あなたの遺影に向かって話し掛けることが当たり前になった私にとって、

これは、日常に溶け込んだいつもの時間であるはずなのに、

不意に違和感を覚えて、

あなたの遺影から位牌、そして、

お骨の入った箱までを順番に見つめるのは、これで何度目だろう。

 

どうして私は今、あなたの遺影に話し掛けているのだろう。

どうしてあなたは、なにも返事をしてくれないのだろうって。

 

そうして私は、

あの夏にいたあなたの温かな手を離した瞬間からの記憶を辿りながら、

此処まで歩んだ日々をもう一度、歩み直すのです。

 

死別の悲しみを乗り越える

 

こんなニュアンスの言葉を聞いたことがあるけれど、

死別の悲しみを乗り越えられる日なんて、きっと来ないのよ。

 

最愛の人の死というのは、

乗り越えられるほど、簡単なものじゃない。

 

あなたを想い、泣いてばかりいた私は、

やがて、あなたを想いながら涙を流すことは、もう終わりにしたいと、

そんなふうに涙を拭ったけれど、

それはきっと、

あなたを亡くした悲しみを乗り越えることが出来たわけじゃない。

 

だって、こうして不意に、

あなたが此処にいない違和感を感じることは、なにも変わらないもの。

 

私はきっとこの先も、

あの夏から変わらないあなたの姿に話をすることにも、

あなたのその声が聞こえないことにも、

不意に違和感を覚えては、

こうして何度でも、あの夏からの記憶を辿るのでしょう。

 

あなたの死を知った痛みは、

きっと永遠に、私の中から拭い去ることは出来ないけれど、

不意に違和感を感じては、

あの夏から、これまでの記憶を辿るこの時間もまた、

今の私の一部であり、

あなたを想う時間の一部でもあるのだと思います。

 

だからきっとこれからも、

突然にあなたに話し掛けることを辞めて、

じっとあなたを見つめることもあるかも知れないけれど、

或いは、急に黙り込んだまま、

そっと静かに、あなたの遺影に手を伸ばす瞬間があるかも知れないけれど、

心配しないで。

 

あなたはただ、そんな私をそこから見守っていてね。

 

不意に覚えた違和感に、

どんなにあの夏からの記憶を辿ろうとも、

やがて辿り着くのは、

夢を見つけた日のことや、あの子と一緒に笑ったたくさんの記憶。

 

あなたのその手を離した先で見つけた素敵な景色も、

ちゃんと辿って、私は必ず、此処にまた辿り着くから。

 

大丈夫。

どんなにあの夏からの記憶を辿ろうとも、

私はもう、泣いたりはしない。

 

目を閉じて、大きく深呼吸をして、

胸の奥がギュッと掴まれる感触をちゃんと感じたら、

しっかりと目を開けて、

何度でも必ず此処に戻って見せるから。

 

 

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